「兵隊は消耗品」で国滅ぶ 昭和の戦争・平成の戦争 その4
Japan In-depth / 2018年8月25日 0時38分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・第二次世界大戦中、旧日本軍は人員を消耗品と見なしていた。
・一方米軍では「エリートが突撃の先頭に立つ」という伝統があった。
・今の日本のエリートは“人間には日々の生活がある”ことさえ理解していない。
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『戦争論』の著者カール・フォン・クラウゼヴィッツは言った。「戦争遂行能力とは、戦争資材(物資と人員)の量と、意志の強さの積である」嘘か本当か知らないが、戦時中、この言葉を引用して、「意志の強さという点では日本兵は世界一なのだから、資材=物量の差は十分に補える」などと、大真面目に講演した将軍がいたという。
▲写真 カール・フォン・クラウゼヴィッツ 出典:パブリックドメイン
事実は、第一次世界大戦で国家総力戦という概念が確立されて以来、燃えるような愛国心だの忠勇無双の強兵だのといった要素をいくら並べたところで、物量的な優劣の前には意味を持たなくなってしまったのであるが。
ただ、旧日本軍が人員=将兵を単なる戦闘資材と見なし、生身の人間にふさわしい扱いをしてこなかったことは、これまた事実である。いや、将兵という表現では正確さに欠けるかも知れない。「消耗品」と見なされたのは、もっぱら徴兵制度で集められた下級兵士で、天保銭(陸軍大学校の卒業生記章のこと)とか恩賜の軍刀組(陸大の成績優秀者)などと呼ばれたエリートたちは、後方の安全なところから命令を下すばかりであった。
特攻隊ですら、職業軍人からは「学生上がり」などと呼ばれた、学徒動員組の速成搭乗員や、予科練(海軍飛行予科練習生)出身の、いわゆるたたき上げの搭乗員をどんどん突っ込ませ、海軍兵学校出身のエリートは最後まで温存されていたほどである。
一方の米軍はどうであったか。第二次大戦当時の米軍においては、独立戦争を担った民兵以来の、「エリートが突撃の先頭に立つ」という伝統が守られていた。なにしろ、後に大統領となる青年士官が二人も、最前線で九死に一生を得るという体験をしている。
一人はジョン・フィッツジェラルド・ケネディ海軍中尉で、哨戒魚雷艇PT109の艇長として南太平洋で作戦行動中、日本の駆逐艦「天霧」と衝突(闇夜で出会い頭の衝突であったとも、故意の体当たり攻撃であったとも言われる)。木製のPT109は船体が二つに折れて沈没し、乗員のうち3名は即死したが、ケネディ中尉は負傷した部下を命綱で結んで6キロ泳ぎ、無人島に漂着した後、オーストラリア沿岸警備隊に救助された。
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