老獪マハティール中国翻弄す
Japan In-depth / 2018年8月25日 11時31分
大塚智彦(Pan Asia News 記者)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・マレーシアのマハティール首相が就任後初訪中。
・「一帯一路」構想の要、中国との鉄道事業中止を習主席に伝達。
・中国依存から脱却。新植民地主義反対表明で中国をけん制。
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マレーシアのマハティール首相は5月の首相就任後初めて中国を訪問し、8月20日に習近平国家主席、李克強首相と相次いで会談した。今回の訪中の最も重要なテーマは中国がマレーシアで進める大型インフラ事業の見直しを伝えることで、マハティール首相は習・李両首脳との会談でその旨を伝え了承を得た。
中国が自国の国際社会への影響力を強めるために編み出した「一帯一路」構想で、東南アジアからインド洋への要となるマレーシアでの巨大プロジェクトが「見直し」と言いながらも事実上の中断に追い込まれたことは中国にとって大きな打撃となる。
もっともマハティール首相は中国に対して礼を失しないように心憎いばかりの配慮をみせることも忘れなかった。その上で中国に対し「マレーシアが抱える巨大債務削減を優先するため」として毅然とした態度で大型プロジェクトの中断を伝えるなど、22年間マレーシア、そして東南アジア諸国連合(ASEAN)をけん引してきた92歳の老練で百戦錬磨、海千山千の政治手腕を余すところなく発揮した。
中国指導部も相手が相手だけに怒る訳にも、恫喝する訳にもいかず渋々了解し、なんとか「良好な両国関係の維持」を演出するのに精一杯だった。習国家主席、李首相ともに笑顔でマハティール首相とは握手を交わしながらも心中は穏やかではないどころか怒り心頭、爆発寸前ではなかったのだろうか。
▲写真 クアラルンプール 出典:Pixhere
◆ナジブ政権の中国依存を塗り替える
マハティール首相が5月の首相就任後初めて今回中国を訪問したが、それ以前にすでに日本には2回訪問している。そして6月11日に日本記者クラブでの記者会見でマハティール首相は中国について「好きか嫌いを問わず友好関係を維持していかなければならない。中国は大きな市場であり、最大限活用していきたい」と発言している。この発言の真意は「中国は市場であり、市場として利用するものの好きか嫌いかでいえば嫌いだ」ということと一般的には理解されている。
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