「一帯一路」に協力すべきわけ
Japan In-depth / 2018年9月7日 12時25分
図)中央アジア鉄道建設 作図)文谷数重
この中国存在感の拡大はロシアとインドを刺激する。両国にとって中央アジアは自国勢力圏といった感覚を持つためだ。
ロシアは中央アジアを一種の自国領と考えている。ウクライナやベラルーシと同じ感覚だ。このため外国の影響力増大を望まない。各国が旧ソ連ブロックから逸脱すると認識した場合、必要あれば介入も考慮する。例えば鉄道を1520ミリのロシアゲージから1435ミリの標準軌に改める状況である。
写真)2017年5月14日の一帯一路フォーラムでの円卓会議後の中露両首脳
出典) President of Russia
インドも同じだ。宿敵パキスタンと中国の鉄道直結は脅威である。また中央アジアに自国権益があるとも考えている。歴史的にみればつい最近まで新疆、西蔵も含めてインド影響圏であった。例えば戦前には新疆は英領インド商圏でありインド人巡査がいた。中国の中央アジア支配はインドにとっても影響圏の蚕食に見えるのだ。
この点で中国の中央アジア支配は日本にとっての利益となる。なぜなら中露、中印対立は好都合だからだ。ロシアやインドと対立した中国は日本に強気には出られず譲歩ベースに後退するからだ。
■ 進出方向が内陸方面にシフトする
第二の利益は中国の進出方向を変えられる点だ。
日本にとって中国の脅威は海洋進出の脅威である。中国が日本より強力な海軍を作った。それが南シナ海に加え太平洋方面にも指向されている。それが日本の不安を掻き立てている。
一帯一路への協力はこれも改善する。一帯への協力は中国のユーラシア内陸進出を促進する。また一路援助も中国のインド洋進出を助ける。そして、その分中国の東シナ海、太平洋方面への進出努力は減らせる。
また、中国軍事力の構成を変えられるかもしれない。中国が中央アジアの自国権益を重視した場合は軍事力整備の力点も変化する。従来の陸軍縮小から更新強化に転じる可能性は大きい。当然ながら海軍力建設はその分減少する。
これも日本にとっては好都合である。日本にとって計画すべき中国軍事力は海軍力だけだ。それ以外はどうでもよい。中国が再び300万人400万人の巨大な陸軍を作ろうが日本にとっては全く脅威ではない。それで中国潜水艦や外洋哨戒機が5隻10機でも減ればそちらのほうよい。
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