米でセリーナが女性差別の被害者との論調
Japan In-depth / 2018年9月11日 16時29分
岩田太郎(在米ジャーナリスト)
「岩田太郎のアメリカどんつき通信」
【まとめ】
・米では大坂選手は完全に霞み、「セリーナの引き立て役」になっている。
・セリーナ選手は差別に果敢に挑戦する英雄と描写されている。
・大坂選手への祝福が十分得られるように配慮できなかったのか悔やまれる。
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日清食品の大坂なおみ(20)が9月8日、テニス四大大会のひとつである全米オープンで、元世界1位のセリーナ・ウィリアムズ(36)を6-2、6-4のストレートで破り、日本人選手による四大大会初の優勝をもたらした。相次いで襲う集中豪雨や台風や大地震などの天災で気分が沈む日本に、大坂は勇気と喜びをもたらした。
一方、米国では日本と違い、報道が「セリーナ一色」に染まっている。出産後の復帰優勝が期待されていたにもかかわらず、決勝戦での審判との争いによって、残念な形で敗北してしまったことへの失望と憤りが大きい。
写真)大坂なおみ選手(2016年全米オープン)
出典)si.robi
そのなかで、新しいチャンピオンである大坂が完全に霞んで「セリーナの引き立て役」になっていることが、米メディアの報道や論評の特徴だ。一部の米メディアには、「ウィリアムズのスポーツマンシップの欠如や個人的な恨みで、世間の祝福と注目を大坂から奪った」とする論調もある。だが、米国で支配的なのは、「ウィリアムズは男性社会の不当な女性差別の犠牲者になった」とする見方だ。そうした論評のなかでウィリアムズは、差別に果敢に挑戦する英雄として描写されている。
「ウィリアムズが敗北の中で女性の勝利もたらす」
米『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「怒り、ブーイング、涙、そして女性差別の非難が、大坂なおみの素晴らしい優勝を台無しにした」と、今回の全米オープンの結末を形容した。
これは、スタンドのコーチ席のパトリック・ムラトグルー(48)がウィリアムズに両手の動作でコーチングし、ウィリアムズがそれに従ったとして、カルロス・ラモス主審(47)によって1度目の「注意」を与えられたことに端を発する。身に覚えがないとして激昂したウィリアムズはラケットをコートに叩きつけて破壊し、2度目の「注意」を受けて1ポイントのペナルティを取られた。
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