安倍首相「戦争手続き」をご存じですか? 昭和の戦争・平成の戦争 その5
Japan In-depth / 2018年9月18日 23時28分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・日米とも宣戦布告なき戦争は想定外、日本軍の内部においてすら「痛恨事」だった。
・安倍首相臨時国会で憲法第9条に自衛隊の存在を明記する憲法改正案を提示する構想に違和感。
・この改正案は、立憲政治に対し宣戦布告なき戦争を仕掛けるようなもの。
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1941年12月7日(ハワイ現地時間、日本時間8日)、日本軍はハワイ・オアフ島の真珠湾軍港を奇襲。米太平洋艦隊および地上基地の航空部隊に大損害を与えた。ここに日米戦争(=太平洋戦争)の幕が切って落とされたわけである。
この昭和の戦争については、様々な呼び方がなされているが、もっとも広く人口に膾炙しているのは「太平洋戦争」ではないだろうか。少なくとも私のような戦後生まれの昭和世代は、そのように聞かされて育った。
しかし最近では、太平洋戦争という呼び方だと対米戦のイメージに限定されがちであるという声が高まり、戦争の経緯から言っても「アジア太平洋戦争」を採用する人が増えてきている。厳密に言えば「第二次世界大戦におけるアジアおよび太平洋戦線」となるのであろうが、これではさすがに長すぎる。
その話はさておき、真珠湾攻撃だが、作戦計画によれば、ワシントンDCにおいて宣戦布告文を国務長官(日本の外相に当たる)に手渡し、その1時間後に攻撃開始ということになっていた。米国東部とハワイの時差まで計算し、緻密な計画が練られていたのである。
そのために、宣戦布告の文書は暗号電文でワシントンDCの日本大使館に宛てて送られ、解読した文書は、機密保持のため大使館で雇用しているタイピストではなく外交官が自らタイピングするように、との訓電まで送られていた。そもそも当日は日曜日で、特別な用事のある外交官以外は出勤していなかったのだが。
いずれにせよ、このタイピング作業に手間取るなどしたため、国務長官とのアポイントメントを遅らせねばならなくなり、結果的に、真珠湾で米太平洋艦隊が壊滅的打撃を受けた数十分後に宣戦布告、ということになってしまったのである。かくして、真珠湾攻撃は「だまし討ち」と決めつけられ、米国議会はただちに対日開戦を決議した。
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