安倍首相「戦争手続き」をご存じですか? 昭和の戦争・平成の戦争 その5
Japan In-depth / 2018年9月18日 23時28分
▲写真 真珠湾のアメリカ艦隊の模型を使いシミュレーションする日本軍 1941年 出典:U.S. Navy National Museum
実はそれまで、米国内の世論は、第二次世界大戦に参戦することに反対であった。1939年に、ナチス・ドイツがポーランドに侵攻し、この時点ではヨーロッパ大陸の大部分を支配していたが、ユダヤ人を強制収容所に送り、ガス室で大量虐殺が行われているといったような実態は、まだよく知られていなかった。そればかりか、ヒトラーの反ユダヤ主義に同調する動きまであったのだが、この問題は稿をあらためて見ることにする。
真珠湾攻撃そのものについても、米軍はかなりの程度まで危険性を予測していたらしい。もともと米太平洋艦隊は、西海岸のサンディエゴを本拠地としていたのだが、中国大陸における日本の侵略行為に掣肘を加えるためと称して、ハワイに進出していた。その分、日本海軍が過敏に反応して攻撃を仕掛けてくる可能性がある、との声もあって、当時最新の戦略爆撃機B-17を多数配備して、上空からのパトロールを強化する算段まで整えていた。
ところが、偶然そのB-17がハワイに到着する当日、奇襲攻撃が敢行されたのである。やはり当時の最新兵器であったレーダーも配備されていたのだが、日本機の大群を補足していながら、味方のB-17だと誤認したために、警戒態勢もとれぬまま攻撃を受けることとなってしまったのだ。「だまし討ち」キャンペーンが大々的に張られたのも、日本軍を侮って油断していたのではないか、という国内世論の批判をかわす狙いもあったに違いないと、今では衆目が一致している。
いずれにせよ、日米ともに宣戦布告を行ったわけだが、米国に同調して、英仏はもとより、ギリシャやアルゼンチンなど世界40カ国以上が対日宣戦を布告したことをご存じだろうか。本シリーズにおいては、対米戦は物量の差だけではなく、情報戦でも完敗していたことを紹介させていただいたわけだが、外交戦においては完敗どころか戦う前に勝負がついていたのだ。
もうひとつ、ここで見ておかねばならないのは、日米ともに宣戦布告なき戦争という事態は想定しておらず、宣戦布告の前に真珠湾を叩いてしまったことは、日本軍の内部においてすら「痛恨事」と言われた、ということである。
10年ほど前に、なんちゃら戦争論、みたいな本がブームになったことがあるが、私は常に、たしなめる側に回っていた。「戦争と恋愛では、なにをしても自由だ」などという煽り文句を印刷した本まで出回っていたので、嘘はよくないよ、という具合に。
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