米国の参戦論と非戦論 昭和の戦争・平成の戦争 その6
Japan In-depth / 2018年9月24日 12時43分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・晩年のクーベルタンは右派社会進化論を信奉しベルリン・オリンピックを絶賛した。
・ルーズヴェルトもフォードも経済的な見地から戦争をとらえていた。
・本当の戦争の悲惨さは、戦争で利益を得る人が少なくないことだ。
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「オリンピックにおいて重要なことは、勝利することではなく参加することである。人生において重要なことは、成功することではなく努力することである」
近代オリンピックの父と呼ばれる、フランスのピエール・ド・クーベルタン男爵の言葉である。
▲写真 Baron Pierre de Coubertin氏 出典:photo by Bain News Service
2020年東京オリンピック開催が近づくにつれ、あらためて注目されている人物だが、実はこの人、ヨーロッパではひどく評判が悪いということをご存じか。
理由は、生前の言動がナチスのシンパと見なされても仕方ないものであったからだ。
1896年、パリで生まれた彼は、英国のパブリック・スクール(中高一貫の私立校)に強い関心を持つようになった。特に、イングランド中部のラグビー校が売り物にしていたラグビー・フットボールの魅力にとりつかれ、後に自ら選手・審判として活躍したほどである。ラグビーもそうだが、心身ともに鍛えるという教育方針が、英国の底力となり、ナポレオンのフランスを打ち負かす原動力にもなったのだと、彼は考えた。
古代ギリシャのオリンピア競技会を復権させるという発想の根底にも、この考えがあったのだとされるが、その副産物と言うべきか、晩年の彼は、俗に右派社会進化論と呼ばれる思想を信奉するようになっていった。
煎じ詰めて言えば、人類にも優れた種と劣った種が存在するのであり、劣った種のために社会資本を投下する行為は(具体的には教育や生活支援など)、社会全体の進歩にとって有害ですらある、という考え方だが、ナチスの論理と二重写しであることは、多くを語るまでもあるまい。
1936年のベルリン・オリンピックに際しては、徹頭徹尾ナチスのプロパガンダに利用された大会であったにもかかわらず、そのことを批判するどころか、「情熱にあふれ、秩序正しいことこの上ない大会」であると絶賛し、「後世の大会すべての規範となるべき」とまで述べた。
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