米国の参戦論と非戦論 昭和の戦争・平成の戦争 その6
Japan In-depth / 2018年9月24日 12時43分
むしろヒトラーが、1925年に刊行された『わが闘争』の中で、米国人の実業家としては唯一、当時のフォードを賞賛したというのが事実だ。まだ政権を獲得する前のナチスが、フォードのもとに密使を送って資金援助を求めたが、断られたという逸話まである。
そもそもフォードは、その反ユダヤ主義的な言動が、ユダヤ系市民の反感を買った結果、フォード製品の不買運動に発展する兆しを見せるや、あっさりと過去の言説を撤回して、公式謝罪までしている。
つまりルーズヴェルトもフォードも、もっぱら経済的な見地から戦争をとらえており、そこには見解の相違以上のものはなかった。
結論から言えば、戦時経済に移行したことによって、米国は恐慌から脱したばかりか、戦後、空前の経済的繁栄を享受することとなったので、軍配はルーズヴェルトに上がったと言える。もちろん、敗戦国の側も含めた、膨大な人命の犠牲を考えたならば、あの戦争は正しかったなどと、口が裂けても言ってはならないと私は思うが。
ひとつ言えるのはだ。アジア太平洋戦を含めた第2次世界大戦について、「ファシズム国家と民主国家が戦い、民主国家が勝利した」などと総括するのは、欺瞞以外のなにものでもない、ということだ。
20世紀以前の植民地争奪戦とは、だいぶ様相を異にしてはいるが、それは資本主義の形態がかなり変わってきたことが原因なので、どの国にとっても経済的な利害が開戦を決意させる動機となったことに変わりはない。
中東の石油資源が、日本経済にとって死活的に重要であるから、米国の中東政策に同調し、軍事的にも強調して行かねばならない、と言い続けているようでは、日本人は本当のところ、あの戦争からなにかを学んだのか、と疑問を呈さざるを得ない。
本当の戦争の悲惨さとは、戦争によって利益を得る人が、決して少なくないという事実なのだ。
トップ画像:Team of Germany in the opening ceremony of Berlin Olympics. 出典 Weilin-Göös
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