池上彰氏のベトナム戦争論の欠陥
Japan In-depth / 2018年9月25日 15時23分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視 」
【まとめ】
・池上氏記事は北ベトナムのフィクションに沿い欠陥とミス多し。
・ベトナム戦争の本質は民族独立闘争と共産主義革命。
・池上氏認識は誤り。「報道の自由」が一方に偏った戦争だった。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=42140でお読みください。】
多方面で活躍するジャーナリストの池上彰氏がベトナム戦争について長文の記事を書いていた。日本経済新聞9月17日朝刊だった。「池上彰の現代史を歩く」という見出しがついていた。ほぼ1ページ全体にわたる大きな記事である。
池上氏がなにをどう書こうが、自由なことは当然である。だがベトナム戦争となると、私はある程度、真剣な関心を向けざるをえない。ベトナム戦争を現地にあって、実際に報道した体験が長かったからだ。戦地となった南ベトナムに4年近く滞在した。その後もベトナム戦争の後に続いた共産主義革命の進展や国内での弾圧、多数の住民の国外脱出などを報道した。戦争の一方の当事者のアメリカ側の実態も長く追った。
そんな自分の体験によって認識した事実に照らして、池上氏のベトナム戦争記事にはおかしな点が多々あった。間違い、欠陥、ゆがみだといえよう。どうやら池上氏にはベトナム戦争の実際の取材の体験はなく、戦争が終わって40年以上も経った、いまの時期にベトナムを訪れ、政府当事者の案内で「取材」らしきことをしたようだ。
写真)湿地帯で負傷兵を運ぶ米兵(1969年 ベトナム)
出典)The U.S. National Archives
池上氏のベトナム戦争についての記事の間違いやゆがみは以下の諸点である。
(1)池上氏はベトナム戦争の本質について、その原因はベトナムの南北分断であり、「東西冷戦の米ソ対立を背景にした戦争」だとか「分断の背景はドイツや朝鮮半島と同じ東西冷戦です」と書く。
しかし現実にはベトナム戦争の本質はフランス植民地支配に対するベトナム民族の独立闘争であり、同時にその闘争が共産主義革命でもあった。1954年にはベトナム独立闘争勢力がフランス軍に勝ち、ジュネーブ平和協定で当面の南北分断が決まった。独立闘争の主役は一貫して北ベトナムに本拠をおくベトナム共産党(闘争中は共産主義を隠すためにベトナム労働党など別称をも使用)だった。
この記事に関連するニュース
-
元CIA工作員が、かつての敵国ベトナムを訪問して新たに発見したこと
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月27日 8時0分
-
【逆説の日本史】ロシアの第一次大戦からの離脱で英仏が目をつけた「チェコ軍団」
NEWSポストセブン / 2024年11月21日 16時15分
-
なぜ今さら長射程ミサイル解禁なのか、ウクライナ戦争をめぐるバイデン最後の賭け
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月18日 15時34分
-
「またトラ」でウクライナ停戦が成立すれば、北朝鮮兵が平和維持軍に?
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月12日 16時0分
-
米大統領選後のリスク、台湾にとって「最悪の状況」とは?―台湾メディア
Record China / 2024年11月6日 17時0分
ランキング
-
1「僕は無実です。独房で5年半くじけずに闘い続けて良かった」2歳女児への傷害致死罪に問われた父親に『逆転無罪判決』
MBSニュース / 2024年11月28日 18時25分
-
2原発の汚染水処理めぐり12億円を詐取か…64歳の会社役員の男を逮捕 架空の発注があったかのように装った疑い
MBSニュース / 2024年11月28日 19時40分
-
3財源明確化、国民民主に求める=年収の壁で「論点」提示―自公両党
時事通信 / 2024年11月28日 16時5分
-
4194キロ衝突死、懲役8年判決…当時少年の男に危険運転致死を適用
読売新聞 / 2024年11月28日 15時40分
-
5「日本人は大好きだけど、もう限界です…」『ハッピーケバブ』在日クルド人の社長が悲鳴、親日感情をへし折る"ヘイト行為"の実態「理由もないのにパトカーを呼ばれて…」「脅迫めいた電話が100回以上」
NEWSポストセブン / 2024年11月28日 18時15分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください