福島の風評払拭に貢献する若者の熱意
Japan In-depth / 2018年10月5日 11時0分
上昌広(医療ガバナンス研究所 理事長)
「上昌広と福島県浜通り便り」
【まとめ】
・福島に国内外の有為な若者によるネットワークが構築されつつある。
・福島の現状は専門家ではなく「普通の外国人」が世界に広める。
・若者の熱意、国際交流が風評被害払拭に貢献している。
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東日本大震災から7年半が経過した。現地で活動を続けていて感じるのは、この地に国内外から有為な若者が集い、震災前には想像できなかったネットワークが構築されつつあることだ。
今回は、その一例として妹尾優希さんを紹介したい。妹尾さんは現在、スロバキアの医学部で学ぶ医学生だ。栃木県で生まれ、東京で育った。ニュージーランドの中学・高校で学び、英国の大学の国際関係学部に入学した。ところが、その後、医学部進学を希望し、スロバキアの医学部に入学した。今秋から4年生に進級する。
彼女は、夏休みに帰国すると、NPO法人医療ガバナンス研究所で研修する。福島と東京を往復し、多くの論文作成を手伝う。そして、スロバキア滞在中もフェイスブックメッセンジャーでやりとりする。
ただ、今夏、久しぶりに出会った彼女は、以前とは全く変わっていた。異郷で揉まれたためだろう。実務能力・コミュニケーション能力が格段に高まった。いくつかの事例をご紹介したい。
今回、彼女は日本に帰国する前の7月の1ヶ月間をモロッコで研修した。そこでカリム・モウトチョウ君と知りあった。カリム君は日本に興味があり、日本の学生団体を通じて、今夏、日本の病院で実習する予定だった。
ところが、学生団体とカリム君の間で行き違いがあり、予定した病院で実習ができなくなった。すでに航空機も手配しており、カリム君はどうしていいかわからなくなった。
窮地のカリム君を救ったのが、妹尾さんだった。私に「日本で引き受け可能な病院を紹介して欲しい。本人は日本の先進医療を見学したく、泌尿器科と循環器内科を希望している」と連絡してきた。
私は彼女に旧知の堀江重郎・順天堂大学泌尿器科教授と加地修一郎・神戸市立医療センター中央市民病院循環器内科医長を紹介した。妹尾さんはモロッコから、彼らにメールで連絡をとり、カリム君の受け入れを調整した。二人と相談し、東京と神戸での宿舎や移動手段も手配した。神戸市立医療センター中央市民病院の実習初日に、カリム君が体調不良で遅刻した際には、その旨を先方に連絡までした。社会人顔負けの段取り力だ。
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