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失踪ジャーナリスト報道の違和感

Japan In-depth / 2018年10月18日 0時0分

失踪ジャーナリスト報道の違和感


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)


「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2018 #42」


2018年10月15-21日


【まとめ】


・失踪ジャーナリストはサウジ王族に近いエスタブリシュメント。


・米サウジ関係の悪化は不可避か。


・レッドライン超えに気付かぬサウジ王家はいずれしっぺ返し受ける。


 


【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=42485でお読みください。】


 


今週のハイライトは何と言っても在イスタンブール・サウジアラビア総領事館訪問後に行方不明となった同国人ジャーナリストの「失踪事件」だろう。この事件、どこかの国の出来の悪いスパイ映画に似て、あまりに謎が多く、驚くべきことばかり。だが、報じられた情報の多くはフェイクかもしれない。筆者が気になった点を列挙しよう。


まず失踪者の名前が気に入らない。日本ではカショギ氏とされているが、それは違う。事件発生当初の英語ニュースでは同氏の姓をKhashoggi「カショーギ」と読んでいたが、これも正確ではない。Khashoggiは同氏が使った英語名に過ぎず、アラビア語ではカショーギではなく、Khaashuqjii(ヵハー・シュク・ジー)と発音するからだ。


名前なんてどうでも良いではないか、と言う勿れ。姓がKhaashuqjiiとなれば、これは典型的アラブ姓ではない。そう、ジャマール氏の祖父はトルコ系であり、サウジ人女性と結婚した後、サウジアラビア初代国王の主治医となった人物である。ジャマール氏はサウジ王族に近いエスタブリシュメントの一員ともいうべき人物なのだ。


その証拠に、イラン・コントラ事件で有名になったサウジの武器商人、アドナンも彼の親戚だという。報道からはジャマール氏が、サウジ政府に批判的な新聞記者で、サウド王家から迫害を受けていた悲劇のジャーナリストというイメージが強い。しかし、実際にはジャマール氏も裕福な家庭出身であり、およそ反体制派ではないのである。



▲写真 アドナン・カショギー氏 出典:Roland Godefroy(Wikimedia)


米ワシントンポストによれば、今回の事件では、サウジ皇太子がジャマール氏を本国に帰国させた上で拘束するよう命令していたという。俄かには信じられない話だが、もしこれが事実であれば、米サウジ関係の悪化は不可避だろう。総領事館内で殺害し、遺体を切断して本国に持ち帰ったとなれば、米国人は黙っていられないからだ。


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