アメリカを侵す中国 その5 中国工作員が米名門大に浸透
Japan In-depth / 2018年10月30日 11時3分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視 」
【まとめ】
・中国の工作により米大学の学問の自由が脅かされているとの報告書が。
・中国側の米大学への「苦情」「圧力」「威嚇」「懐柔」等の実例報告。
・同報告書、米官民での対中関係の見直しと中国への認識の硬化 を反映。
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アメリカ議会が設立した半官半民のシンクタンク「ウィルソン・センター」(公式名称はウッドロー・ウィルソン国際学術センター)は、この9月、「アメリカの高等教育への中国の政治的な影響と干渉の活動の研究」と題する報告書を公表した。
同センターはアメリカ議会によって創設され、運営経費の30%は議会から出ているが、学術研究はすべて独立を標榜している。同報告書は同センターのなかの中国研究部門である「キッシンジャー米中研究所」が企画した。実際の調査や最終報告の執筆はウィルソン・センターの研究員で若手の女性米人学者のアナスタシャ・ロイドダムジャノビク氏が中心となった。調査にはおよそ一年をかけたという。
中国当局によるアメリカの教育・研究機関への干渉は長年、多数の事例が断片的に報告されてはきた。だが、このようにその干渉や影響の全体像を150ページという長文で正面から総括した報告の前例はないといえる。
同報告書の調査のためにロイドダムジャノビク研究員らはアメリカの各大学のうち学術的に主要とされるカリフォルニア大学、ハーバード大学、ウィスコンシン大学、コロンビア大学、ジョージタウン大学など25校を選び、それらの大学の中国やアジア関連の学部主体の教職員合計百八十人から直接に事情を聞いたという。
その調査結果の総括として報告書はまず「これまでの20年間にアメリカ駐在の中国政府外交官らはアメリカの多数の大学の教職員や学生、大学運営者にとっての学問の自由を次のような方法で侵害した」として以下の諸点を指摘していた。この20年という年月は習近平主席の指示で統一戦線工作部が大増強され始めた2015年ごろよりずっと古くへとさかのぼりはするが、最近の数年間の事例ももちろん含まれているわけだ。いずれも中国側がアメリカの大学に対して以下のような言動をとったというのである。
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