プロレスの味方は、いたしかねます(上)スポーツの秋雑感 その3
Japan In-depth / 2018年10月30日 23時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・プロレスは格闘技と認められず、シンパシーなし。ファンの思いは否定せず。
・米国でプロレスはエンタメ・ショー業界に加盟も。日本は真剣勝負が建前。
・ゆえにファンが過激さ求め、生命に関わる事故も。危険な技の規制検討も。
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作家の村松友視氏には『私、プロレスの味方です』(ちくま文庫)という著作がある。一方、ジャーナリストの立花隆氏は、「昭和天皇には戦争責任がある」とはっきり書いた時よりも、「プロレスはくだらない」と決めつけた時の方が、読んだ人からのいわゆるネガティブな反応がずっと多かった、と述べたことがある。
私は、どちらかと言うと立花氏寄りの立場だ。いささか曖昧な表現になるのは、私自身はプロレスにシンパシーなど抱かないけれども、プロレスが大好きという人たちの思い入れを、むげに否定する気にもなれないからである。
少し個人的な話をさせていただくと、20年ほど前に他界した祖母が、
「アントニオ猪木が、血だらけになってまだ立ち上がって戦うのを見ると、私も頑張らなくちゃ、と思えるのよ」などと語っていたのを、今でも覚えている。その効用なのかどうか、祖母は96歳での大往生だったが、野球、プロレス、相撲いずれも毛嫌いしていた学究肌の娘(=私の母親)は、61歳で祖母に先立った。
話を戻して、村松氏の著書が話題になったのも、敏腕編集者から小説家に転じたインテリが、自分は「プロレス者」であると公言したところに、その理由が求められる。今でこそ、たとえば私などが「サッカー者」を名乗っても、誰からもなにも言われないが、この本が出た当時(情報センター出版局からの初版は1980年)は、プロ野球や大相撲を含めて、TV中継されるような観戦スポーツに熱中するなど、「インテリのやることではない」というに近い風潮が、まだまだ残っていた。
私見ながら、その後わが国は、いささか行き過ぎた大衆社会になっていったのではないだろうか。具体的にどういうことかと言うと、大学教授あたりが実はカラオケ好きだったり、プロレス好きだったりすると、
「あの人はインテリらしくない」と評価される。そう、これは「親しみが持てる」といった意味の、誉め言葉となっていたのだ。その裏返しとして、立花氏のようにプロレスをこきおろすと(知性、感性、品性が同時に低レベルにある人だけが熱中できるものなのだとか)、「なんだ、インテリぶりやがって」という具合に「炎上」するのである。昭和天皇の戦争責任問題とはまた別のベクトルで「同調圧力」が働くと言えばよいか。
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