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陸自個人携行救急品の中身は70%が欠陥品

Japan In-depth / 2018年11月8日 14時27分


図3:主要な戦傷の受傷時から戦死に至るまでの時間(筆者作成)


戦場では最前線の治療施設に到着するまでに2時間以上を要してしまうため、戦死の90%は治療を受ける前に発生している※1。



図4:治療・後送段階別の戦死者発生区分(筆者作成)


このため、自衛隊員個人の救急品と救急処置能力が充実していなければ、負傷時に生きて治療施設にたどりつくことが出来ない。


これほど重要な個人携行救急品でありながら表1にある、追加品まで含めた全てが陸上自衛官全員に支給されるようになったのは、2016年11月から国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)の第11次派遣隊からであった。しかも、陸上自衛隊員全員の救急品の充実は陸上自衛隊が自発的に行った施策ではない。報道や国会で取り上げられるなどの外部からの作用によるものだ。


当初、陸自の個人携行救急品には国内用、国外用に区別されて支給されていた。まず、こうした区分があること自体が問題であると報道で取り上げられ、有事の際には表1の「国際活動等装備」が追加されることになった。しかし、救急品とは平素から備え、使用法に習熟しなければ効力を発揮しない。筆者はこのことを軍事研究誌2016年8月号「四肢が吹き飛ぶ戦闘外傷からのサバイバル」などで訴えた。平和安全法制により「駆け付け警護」や「宿営地の共同防護」の任務が追加されることに伴い、2016年9月30日の衆議員予算委員会、同年10月11日の参議院予算委員会にて、筆者の軍事研究誌の記事が取り上げられ、表1にある救急品の全てが、陸自の全隊員へと支給されるきっかけになった。



画像1:2016年10月11日の参議院予算委員会にて照井の作成した軍事研究の表を用いて質問する大野議員 ©照井資規


 


内容品選定の疑問


筆者は現職の自衛官時代から、自衛隊員の戦場における救命の問題について研究してきた。陸自の個人携行救急品については、ヨルダンでのSOFEX、フランスでのEUROSATORY2018、南アフリカ共和国でのAAD2018などの主要防衛展にて開催各国軍の医療部ブースへの取材で意見を聴取した。また、アメリカのIMSHなどの医療展では医学の専門的視点から意見を聴取、国際標準野戦救護・治療教育を提供するITLS国際会議※2ではSAMチェストシールの考案者である米軍の元軍医、Dr. Sam Scheinbergより毎年直接、救急品の説明と教育を受けている。これらを踏まえたものが表1と表2「更に追加することが望ましい内容品」である。


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