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陸自個人携行救急品の中身は70%が欠陥品

Japan In-depth / 2018年11月8日 14時27分


表3:さらに追加することが望ましい内容品(筆者制作)


陸自の個人携行救急品について異口同音に受けた批判は、たった1か所の手足に受けた銃創の止血すら満足に出来ないことだ。軍用小銃弾は弾丸直径の30倍から40倍の範囲を破壊するため、18cm~24cmにもなる創口を「救急包帯」の4インチ四方(10cm四方)のガーゼ面では被覆するのみでも面積が不足する。しかも銃創は射入口と射出口と2カ所以上の創となるため、他国軍隊では圧迫止血効果を高めたり被覆面積を補うため、3.7m~20mのガーゼ包帯の携行を必須としているが陸自の救急品にはこれが無い。



画像2:1か所の手足の銃創に使用する衛生資材の比較 ©照井資規


最優先で追加支給すべき十分な長さのガーゼ包帯を2度にわたる内容品追加でも行っていないのは、戦闘外傷を踏まえて内容品を選定していないためではないか。


さらに「止血ガーゼ」である「QuickClot カオリンⅩ」は20cm四方の血液凝固促進剤を含侵させたガーゼであり他国軍隊が携行する包帯状止血剤の28分の1の面積しかなく、止血を行うには量が極端に不足している上に原文の説明書には「出血を制御する処置の代替となるものではない」と記述されているほど止血効果が不十分であるためほとんど役に立たない。



画像3:自衛隊と米軍の包帯状止血剤の比較 ©照井資規


防ぎえた戦闘外傷死のうち手足からの出血が占める割合は12%※3である。止血帯は一時的に血流を遮断しているに過ぎず、阻血痛を伴うので緊縛止血の痛みに20分程度で耐えられなくなる。その間にガーゼ包帯と止血ガーゼによる止血法に切り替える必要があるが、これらが無ければ、緊縛止血の痛みに耐えられなくなった時点で救命の可能性は極めて低くなる。


防ぎえた戦闘外傷死のうち、首及び手足の付け根からの出血が占める割合は18%※3であり、これらには止血帯は効果が無いため、ガーゼ包帯と止血ガーゼによる止血が頼りであるが、陸自の救急品ではそれらの能力が不足している。


ベトナム戦争(1955年~1975年)では防ぎえた戦闘外傷死のうち、胸部に受けた穿通性外傷による緊張性気胸が占める割合は33%であったが、対テロ戦争(2001年~2011年)には1%まで減少させることができた※3。これは銃弾や爆弾の破片などで生じた胸の開放創を密閉し、胸の中に溜まった空気を排出することもできる一方弁を備えた閉塞包帯「チェストシール」の使用法に正しく習熟していることが前提となる。陸自のチェストシールは「SAM Chest Seal with Valve」であり、これは使用法の誤りにより負傷者が致命的な状態に陥りかねないほどの欠陥品である。内容品の追加支給を始めた頃には最新型の「SAM Chest Seal Valved 2.0」が発売されており、欠陥は解消され包装容積も小さくなった。それにも関わらず、自衛隊は最新型を買わなかった。


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