ゴーン後の日産、次の一手は?
Japan In-depth / 2018年11月26日 10時47分
写真)仏マクロン大統領と安倍晋三首相 2017年5月 出典)首相官邸
仏政府は対立が泥沼化するのを嫌気したか、交渉の結果、2015年12月に仏政府とルノーが日産の経営に関与しないことで合意し、さらに日産取締役会はルノーの取締役会の承認を得ずして、ルノー株を買い増すことが出来るようになった。日産としてはピンチを脱し、実利を得た格好になった。3者、とりあえず現状維持で行こう、とう妥協策だったが火種は残った。なにせ、大統領は当のマクロン氏なのだ。
2018年になり事態は再び動く。マクロン大統領支持率低迷の原因は高失業率だ。仏政府は、ルノー・日産・三菱自動車の3社合併を画策しているとされた。ゴーン氏のルノー会長続投を認める代わりに、仏政府は、3社大合併をゴーン氏に飲ませたのではないか。市場はそう見た。
②経営戦略への不満
アライアンスという緩い提携関係にある限り、仏政府の意向は反映されにくい。しかしゴーン氏は最近、経済合理性より、フランス政府寄りの施策を取り始めていた。例えば、2017年には日産自動車の小型車「マイクラ(日本名:マーチ)」の欧州向け生産はインド工場から仏ルノー工場に移管された。仏政府の意向を反映したものと市場で受け取られた。目に見えない形で仏政府の関与が強まれば、こうしたケースが今後増える可能性がある。仏政府は自国経済へのメリットを最大化しようとするからだ。それは日産としていや、3社連合にとって決して好ましいことではない。
筆者は1992年当時、まだゴーン社長が誕生する前、日産自動車で海外事業計画を立てる部署にいた。中長期的に海外の各市場でどの車を売り、どれだけ利益を得るのか。その為に、どこでその車を組み立て、その部品はどこで作るのかを決める戦略部署だ。簡単に言えば、エンジンブロックはメキシコで作り北米に輸出し、北米の工場でエンジンを組み立てる。そして車に取り付けて完成車とする、といった具合だ。
重要なのは、どこで部品や車を作れば一番利益が得られるかを考えることだ。これを当時社内で「グローバル工順」と呼んでいた。自動車メーカーの利益の源泉である。それが、フランス政府の思惑で決まるとしたら、3社連合の存続は危うくなるだろう。当時の日産も「グローバル工順」の経済合理性を十分に追求しなかった。巨額の赤字を垂れ流す海外子会社をたたむことを先送りし、逆に体力以上に海外進出に前のめりになった。スペインの自動車会社モトール・イベリカ(現日産モトールイベリカ会社)の買収などその最たるものだった。海外市場における車種の統廃合もなかなか進まなかった。その結果、巨額の有利子負債を抱えるに至り経営が悪化、ルノーの支援を仰ぐことになったのだ。同じ轍を踏んではならない。
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