ゴーン後の日産、次の一手は?
Japan In-depth / 2018年11月26日 10時47分
③朝貢が続くことへの不満
日産はルノーに配当金を支払い続け、もう出資を受けた分はほぼ返済している。恩返しは終わったという意識があるはずだ。現に現在、ルノーの連結利益の半分が日産から得られる持ち分法投資利益によるものだ。「日産はルノーの財布」と言われるゆえんだ。これがいつまでも続くことに対する不満が日産社内に溜まっていたことは想像に難くない。
■ 日産の次の一手
こうした不満がマグマのように溜まっていく中、ゴーン氏のルノー会長任期が2022年末まで延長された。当初、ゴーン氏の会長続投に否定的だった仏政府はゴーン続投を認めたことで、ゴーン氏に貸しを作った。ゴーン氏もこの時から政府の意向を無視できなくなったとの見方が広がった。
近いうちゴーン氏は3社統合に動くのではないか?そうした疑心暗鬼が日産社内に広がっていく中、追放は今のタイミングしかない、と日産の現経営陣は判断したのだろう。司法取引まで使い、この春から綿密に準備してきたことがそれを物語っている。
次なる一手だが、日産としてはこれを機に経営の独立性を回復したいだろう。しかし、道のりは平たんではない。
まず、仏政府はルノー株を手放さないだろう。日産はルノー株を買い増すかもしれない。しかし、ルノーの議決権が消滅する25%まで買い増すことに、ルノーも仏政府も黙っているわけがない。激しく抵抗するに違いない。
では、日産が増資をしてルノー株の比率を下げるのはどうだろう?これも支配権の異動を伴う株式発行等を行う場合、株主総会決議が必要となる場合があり、そうなれば当然大株主であるルノーが反対するであろうから実現は難しい。第一、新株発行などしたら株価が下落するだけだろう。一般株主の賛成すら怪しい。
逆にルノーが日産を完全子会社化しようと思っても莫大な資金が必要で実現性は低い。仏政府も一般株主も賛成しにくいだろう。
となると、日産が完全独立をするための妙手というのは考えにくい。株の持ち合い比率には手を付けずアライアンスを維持する。仏政府、ルノーの面子を保ち、3社完全統合を諦めさせる。その上で、3社連合のトップには日産の人間が就く、というあたりが落としどころなのではないか。ほぼ現状維持だが、3社連合のかじ取りは日本人トップが行う、というものだ。こうすんなりいくかどうかは不透明だが。
しかし、よくよく考えてみれば、これまで上手く行っていた仏ルノー・日産・三菱自動車のアライアンスをバラバラにする必要もないように思える。ゴーン経営に過度に頼り切っていたのは日産の方であり、単に経営権を取り戻すだけのクーデターなら、そこに大義はない。既に基幹部品の3割は共通化が済んでいるというが、筆者から見ればそのスピードは決して速いものではない。計画では共通化率7割を目指していたはずだ。
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