ゴーン報道に見る日本の労働倫理
Japan In-depth / 2018年11月28日 11時19分
勿論、日本にプロテスタントの伝統はない。しかし、不思議なことに江戸時代以降の日本には、このウェーバーが定義するような勤勉さや禁欲性などの労働倫理が育まれてきた。こうした伝統がなければ、日本が明治維新以降ごく短期間で国力を発展させることは難しかったのではないか。不思議な偶然の一致というべきだろう。
こうした労働倫理だからこそ、日本人は組織の経営トップが桁違いに巨額の報酬を得ることを潔しとしてこなかったのだろう。但し、ゴーン氏が日産に来てからは日本の経営も変化しつつある。一部欧米評論家は日本の経営者報酬が低すぎると批判するが、今のゴーン氏への批判は高額報酬よりも、巨額の所得隠しの方なのだから。
ゴーン事件の本質は単なる「外人経営者」に対する差別でも、日仏自動車業界の確執でもない。20年前、日産が苦境にあった時、これを助けたのはルノーだったが、今や日産は業績を回復しルノーに多額の配当を支払っている。ゴーン氏は日仏の狭間で苦しんだに違いないが、最後は彼の「徳のなさ」が命取りになったのではないか。詳しくはJapan Timesをご一読いただきたい。
〇東アジア・大洋州
今週アジアのハイライトは台湾の民進党が地方選で大敗したことだろう。台湾総統は与党民進党の党首を辞任、2020年の次期総統選での再選はなくなった。彼女の敗北を如何に見るべきか。中国と親和性の高い国民党が躍進したからといって、台湾有権者の対中姿勢が変わったとは思えない。要するに、蔡英文総統が弱い政治家だったということだろう。
写真)蔡 英文氏
出典)Wikimedia Commons
〇欧州・ロシア
ロシア海軍が牙を剥いた。クリミアを巡り、ウクライナ海軍と衝突し、発砲する事態に発展したという。場所はケルチ海峡という戦略的要衝、ようやるよ、としか言いようがない。ロシアという国にあまり魅力はないが、ここぞという時に必ず、しかも平然と「武力を行使する」という、あの厚かましさには文字通り脱帽する。
こんな国が北方領土を簡単に返すとは到底思えない。日本には気の早い人が少なくなく、落とし所は2島か、それとも2島+かなどと言い出す輩がいるので要注意だ。日本側が勝手に思っていても、ロシアがこれらを全く返さない選択肢だって十分ある。このことを決して忘れてはならない。
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