陸自のAH-Xを分析する その2
Japan In-depth / 2018年12月1日 12時0分
▲写真 ボーイング AH-6 出典:Boeing
仮にAH-Xは攻撃ヘリに限定し、機種を増やさないというのが原則であれば、事実上対象になる攻撃ヘリはAH-64Eが最有力だろう。防衛大綱によれば陸自が想定すべきシナリオは、大規模な着上陸作戦ではなく島嶼防衛、ゲリラ・コマンドウ対処とされている。これらの任務に置いて、データリンク能力が低く、あるいは無い、音声無線だけを搭載した単に汎用ヘリに武装を搭載した程度の、ISR(情報・監視・偵察)が低い安価な武装ヘリでは対処は難しい。
▲写真 AH-64 出典:Jerry Gunner
また本土でのゲリラ・コマンドウ対処のためのISRや火力支援のプラットフォームであればヘリでは無くともよい。より調達、運用コストの低いスーパーツカノのようなターボプロップのCOIN機をこれに当てることもできるだろう。これを攻撃ヘリと組み合わせるという運用も検討すべきだ。
調達単価は12~15万ドル程度で、運用コストは時間あたり千ドル程度と極めて低い。また速度はヘリの約2倍、航続距離は約3倍というメリットもある。実際米空軍でもOA-X-プログラムでこのようなCOIN機の調達を検討している。だが航続距離の面では島嶼防衛には使用できない。
島嶼防衛ではネットワークとC4IR機能は特に必要だ。陸自のネットワーク化は遅れており、海自の護衛艦や揚陸艦、空自のAWACS、戦闘機、地上部隊とネットワークによる連絡が必要だ。また米軍との共同作戦においても、データリンク能力は必要不可欠だ。米軍はネットワーク化されていない友軍を戦域に入れない。
だがAH-64Dを含めて、10式戦車、16式機動戦闘車などもネットワーク機能は中隊規模に限定されており、特科などでも殆ど音声通信で指揮通信を行っている。また陸自には統合末端攻撃統制官JTAC(Joint Terminal Attack Controller)のような存在がない。またセミアクティブのレーザー誘導弾を誘導するデジネーターを有している部隊も無い。これは先進国の軍隊としては極めて異常だが、本年4月に発足する水陸機動旅団にはじめて終末誘導を担当する部隊が編成された。つまり現状では島嶼防衛のために編成されるであろう統合任務部隊は、米軍との共同作戦に著しい不具合が生じるということである。
リンク16やCDL(Common Date Link)、衛星通信システムを備えた攻撃ヘリは3自衛隊の上陸部隊、護衛艦、揚陸部隊司令部、AWACS、スキャンイーグル、統合末端攻撃統制官などのアセットと連携して中低空域におけるISRの中間関節として機能する。現状の候補の中ではAH-64Eなど攻撃ヘリしかこれに該当する機体は存在しない。導入コストや、米陸軍は2060年までアパッチを使い続けることを公約しており、今後40年間米軍とのインターオペラビリティの確保が可能という面からもAH-64Eが有利だろう。
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