装輪155mmりゅう弾砲は必要か 上
Japan In-depth / 2018年12月15日 11時0分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
【まとめ】
・「装輪155mmりゅう弾砲」の採用には賛成できない。
・現有「FH-70の寿命」は「装輪155mmりゅう弾砲」導入理由にならない。
・「装輪155mmりゅう弾砲」調達は次期大綱の火砲数とMLRS更新を決定後に決めても良いのでは。
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防衛省は来年度予算の概算要求で、現用の牽引式155mm榴弾砲、FH70の後継として「装輪155mmりゅう弾砲」を7輛48億円(単価6.9億円)、初度費17億円を要求している。
本年5月末に防衛装備庁はホームページで、開発中の「装輪155mmりゅう弾砲」の情報を公開し、以下のように述べている。
「装輪155mmりゅう弾砲」は、現有の牽引式榴弾砲(FH-70)の減勢に対応するものであり、射撃・陣地変換の迅速化、戦略機動性の向上及びネットワーク化を図った装輪自走砲として、開発中である。
平成30年5月31日までに試作車両計5両が株式会社日本製鋼所から納入され、その後防衛装備庁において評価・試験を行う。仕様は主砲が155mm/52口径、全長約11.4m、全幅約2.5m、全高約3.4m、乗員定数5名となっている。
▲写真 FH-70 出典:著者撮影
このようなトラックの車体をベースにした簡易型の自走砲は路上走行能力が優れ、また牽引砲に比べて展開や撤収が容易であり、また運用人員が少なく、運用コストは装軌型の自走砲よりも安価である。このため今世紀に入って多くの国で採用されている。だが筆者はこの「装輪155mmりゅう弾砲」の採用は賛成できない。
まずは開発に至るまでの経緯が胡乱である。「装輪155mmりゅう弾砲」は当初は「火力戦闘車」と呼ばれて24年度に開発予算が要求されたが事前の海外製品などの調査が不十分であり、始めに国産開発ありだとして財務省が認めなかった。
このため25年度に再度要求され、認められた。試作が平成25~28年度。同じく技術・実用試験が平成25~28年度となっており、平成25年度の「ライフサイクルコスト年次報告」では200輌の調達を前提とした上で、総予算が1,746億円で、開発試験費用が181億円、量産に関しては初度費が12億円、生産費が959億円、よって調達単価は4.86億円となる。だが24年度の政策評価では開発費が100億円となっている。防衛装備全体にそうだが、政策評価では試験費などを含めておらず、納税者に対して低めに開発を見せている。これは大きな問題だ。また、先述のように来年度概算要求では調達単価は約1.4倍に高騰している。これについての説明もない。
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