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装輪155mmりゅう弾砲は必要か 上

Japan In-depth / 2018年12月15日 11時0分

更に問題なのは「ライフサイクルコスト年次報告」には構想研究費や技術研究費が全く計上されていない。つまり財務省に指摘された始めに国産開発ありき、という批判を全く無視したことになる。諸外国でどのような簡易型自走榴弾砲が開発、運用され、我が国にはどのようなものが必要かということが全く検討されなかった。


当初車体は三菱重工製が陸自向けに生産している重装輪回収車を、主砲は99式のものを流用することが決定されていた。だが、その後、重装輪回収車は重量が重すぎ、また機動力に欠け、採用後のコンポーネントの供給にも難があることからドイツのMAN社の8輪トラック、HX 8×8に変更された。重装輪回収車は重量が24.8トンであり、クレーンを除いた車体だけでも20トン前後はあり、当初のもくろみのペイロード28トンのC-2輸送機に搭載することは不可能だっただろう。この車体の変更は評価ができる。駄目な車体をそのまま採用するよりはマシだ。


だが「現有の牽引式りゅう弾砲(FH-70)の減勢に対応するため」というのも事実ではない。FH-70の寿命は十分にある。FH-70の砲身は射撃機会が少ないために寿命が十分にある。我が国では射場が狭く、最大射程での射撃は不可能なために、米国ヤキマの演習場で行われる演習で年に2門程度が派遣され、その時に撃つ程度だ。国内での実弾射撃は射程が短いため砲身に掛かる圧力も少ない。しかも回数も少ないので砲身の摩耗が少ない。


ピーク時、陸自は400門のF-70を保有しており、世界最大のFH-70のユーザーであった。防衛大綱によって、火砲の数が減じられているのでローテーションで使用しているのであれば尚更摩耗は少ない。


問題はスバルがライセンス生産していたガソリンエンジンのAPU(補助動力装置)だが、これはイタリア製のディーゼルのAPUが存在し、換装できる。それに加えて足回りなど含めてオーバーホールしてもコストは1門あたり3千万円ほどにしか過ぎない。APUが寿命だから、砲が寿命で用途廃止するというのは納税者の理解を得られない。率直に申し上げて防衛省の説明は虚偽である。


「装輪155mmりゅう弾砲」を導入するということはまだ使用が可能なFH-70を廃棄することを意味する。そうであれば納税者が納得できる理由を述べる必要があるはずだ。装備が寿命だと嘘をつくのは納税者に対して誠実な態度とはいえない。更新の理由を述べるのであれば、ドクトリンや運用構想の変更であるはずであり、それを説明すべきだ。


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