装輪155mmりゅう弾砲は必要か 下
Japan In-depth / 2018年12月15日 18時0分
▲写真 南アフリカ、デネル社のT-5。射撃時の安定を確保するために車体横に駐鋤(ちゅうじょ)を装備している。出典:著者撮影
機甲部隊に近接して火力支援する必要は必ずしもなくなっていた。であれば途中から99式の調達をやめて、簡易型自走砲に切り替えても良かったはずだ。99式の代わりに「装輪155mmりゅう弾砲」のような簡易型自走砲を採用すべきだった。更に申せばゲリラやコマンドウ対処であれば迅速な展開や撤収は必要無く、FH-70でも何の問題もない。
例えばFH-70を転用して6×6のトラックに搭載して、フランスのカエサル同様に17トン以下に抑えればC-130でも空輸ができた。その場合開発費も製造費も安く抑えられたはずだ。C-2輸送機はせいぜい30機ほどが調達される予定だが、それも財務省が高い調達単価と、F-35A以上に高い維持費と批判しており、調達数が削減される可能性は小さくない。機動戦闘車もC-130では空輸できず、少ないC-2で機動戦闘車や榴弾砲ばかりを輸送するわけにはいかない。
▲写真 カエサル 出典:著者撮影
「装輪155mmりゅう弾砲」の空輸による戦略機動は画餅でしかない。開発関係者によればフランスのカエサルは18t弱であるが、軽量化のために射撃時の安定が弱い。だから「装輪155mmりゅう弾砲」では安定度を上げて射撃精度を高めるために重量が増加した、と説明する。これは一理あるが、戦略機動を重視するならばカエサル同様に軽量化すべきだった。精度は精密誘導弾で補える。だが、すでに人民解放軍でも導入しているが陸上自衛隊では未だに導入されていない。単に既存装備の買い替えではなく、何のために新たな榴弾砲を導入するのか、また特科全体のあるべき姿を陸自が描いているとは到底思えない。
▲写真 カエサルは約17トン。c-130で空輸が可能だ。出典:著者撮影
更に申せばゲリラ・コマンドウ対処に155mm榴弾砲である必要があるのか。ゲリコマ対処であれば既存の120mm迫撃砲あるいは、105mm榴弾砲でもよかったのではないのか。
島嶼防衛であれば米軍も採用したBAEシステムズの39口径超軽量155ミリ榴弾砲、M777を1個大隊程度導入すれば宜しい。M777の俯仰角は-3~+71度で左右の旋回角度は22.5度、クルーは5名で展開から射撃までは3分、射撃から撤収までに要する時間は2分である。
発射速度は最大毎分4発、通常毎分2発である。射程は通常弾で24.7キロ、ロケット・アシスト弾、ベース・ブリード弾で共に30キロとなっている。M777は総重量が4.2トンと軽量であり、C-130戦術輸送機は勿論、UH-60など中型ヘリで懸吊空輸が可能だ。BAEシステムズ社のポーティ・システムはM777をベースにしたシステムだ。
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