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装輪155mmりゅう弾砲は必要か 下

Japan In-depth / 2018年12月15日 18時0分

つまり現時点では陸自は終末誘導手段を殆ど有していない。更に前方観測のデジタル化は遅れ、野戦特科情報処理システム(Field Artillery Data-processing System)もコストが高いために普及していない。このため特科の射撃指示は未だに紙の地図と音声無線に頼っている。また普通科の基幹連隊指揮統制システム(Regiment Command Control system, ReCs)も同様であり、通信速度も遅い。更に近年導入された広帯域多目的無線機(略称: 広多無(コータム)が性能不良で、改良を重ねても通じないということは部隊現場では公然の秘密である。


このため、仮に最新の榴弾砲を導入しても目標を探知し、正確な位置を把握して、適切かつ効果的な射撃を精密に行うことができない。我が国は都市部に人口の7割が集中しているが、であれば尚更砲兵のネットワーク化、精密射撃化は諸外国より必要なのだが、致命的に遅れている。


「装輪155mmりゅう弾砲」の導入よりも、観測用のヘリやUAV、先方観測誘導部隊の更新導入及び充実、指揮通信およびネットワークの充実、更に精密誘導砲弾の導入などの方が優先順位は高い。島嶼防衛用に必要ならばむしろM777を1個大隊20~30門程度も導入すればいいだろう。FH-70の人件費を抑えるならば155ミリ榴弾砲の定数を削減するという手段もある。「装輪155mmりゅう弾砲」の導入の是非はその上で検討されるべきだ。しかも来年度からは次期防衛大綱が新たに採用される。なにも駆け込みみたいに調達を焦る理由もあるまい。


そもそもまだ十分に使えるFH70を寿命がないと虚偽までついて廃棄するのは納税者に対する背信行為である。モスボール保存するか、あるいは第三国に転売してその利益を国庫に納めるべきである。


いずれにしても陸幕には装備調達のグランドデザインも、優先順位も決められる能力がない。せめて他国の軍隊並の合理性を持って欲しいものだ。


(上の続き。全2回)


トップ画像:装輪155mmりゅう弾砲(試作品)【走行姿勢】出典:防衛装備庁より


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