ファーウェイ排除の戦略的意味
Japan In-depth / 2018年12月18日 16時42分
島田洋一(福井県立大学教授)
「島田洋一の国際政治力」
【まとめ】
・中国製ハイテク機器に小手先では除去できない本質的な危険あり。
・ファーウェイ幹部逮捕は米のメッセージ。取引継続企業は締め出しへ。
・中共が情報通信の覇権握れば、人類は精神的な死を迎えかねない。
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2018年12月1日、ブエノスアイレスにおける米中首脳会談の数時間後に、米司法省の要請を受けたカナダ当局が、中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の最高幹部で創業者の娘、孟晩舟氏を「対イラン制裁法」違反容疑で逮捕した。
ファーウェイは情報空間支配を狙う中国の国策会社、いや、より正確には中国共産党の「党策」会社である。米政府は数カ月来、同盟国に対し、同社はじめ中国通信企業を政府調達から締め出すよう圧力をかけてきた。
その後孟容疑者は保釈されたが、同氏の身柄自体は二義的な問題である。米政府は中国のハイテク企業排除に本腰であり、同社と取引を続ければ、同じく刑事訴追のターゲットになるという、国際的な念押しのメッセージの意味が大きかった。
写真)カナダ当局に逮捕された孟晩舟容疑者
出典)Wikimedia Commons(Office of the President of Russia)
中国製ハイテク機器の使用には、いかなるセキュリティー上のリスクがあるのか。日本経済新聞(電子版)12月12日付で、この分野に精通する時田剛氏が端的に指摘している。
要約すれば、「何度か深刻な問題が見つかっている。例えば通信機器に、仕様書にないポート(通信の出入り口)が見つかった例がある。インターネットで外部と通信が可能なため、不正にデータを盗み出すバックドア(裏口)に悪用できる。携帯電話の基地局については、そこを経由するスマホの端末識別用の情報や通信の宛先情報が分かる。企業の拠点に設置するネット接続用のルーターなどは、設定次第で社内ネットワークに流れるあらゆる情報を取得できる。最近の不正プログラムは特定の時間しか動作しないなど手が込んでいる。どこまで検査すれば安全なのかというゴールを設定できない」というのである。小手先の対応では除去できない本質的な危険の認識には以上で充分だろう。
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