平成生まれと「Eジェネレーション」(上)
Japan In-depth / 2018年12月22日 23時0分
少し解説を加えておくと、冷戦終結後、フランス社会党はそれまでの社会主義国家建設路線から、ヨーロッパ統合へと大きく舵を切った。これに新生(統一)ドイツの社会民主主義勢力が共鳴し、現在のEU、そして統一通貨ユーロの誕生までの道を開いたわけだ。つまり、1989年以降に生まれた人たちをヨーロッパ統合の申し子と位置づけるのは、根拠のある話だと言える。
その「Eジェネレーション」と呼ばれる若い世代だが、第一の特徴として挙げられるのは、代々受け継がれてきた地元のコミュニティーよりも、インターネットなどでつながった、いわば二次元のコミュニティーに帰属意識を持つことであるという。
▲写真 Facebook Connections 出典:flickr(Michael Coghlan)
考えてみれば、当然のことだ。冷戦の時代に、たとえばポーランドの大学生が英国での学究生活を夢見たとしよう。その夢を実現する手段は、事実上、亡命しかなかった。
今は、なにしろ国境があってないようなものであるから、ポーランドから英国へと生活の拠点を移すのは、単なる「引っ越し」に過ぎない。もちろんこれは、学生に限った話ではなく、多くの人が、より条件のよい働き口を求めて移民となり、海を越えていった。
これが、英国をEUから離脱させる大きな要因となった(最終的にどうなるか、まだ分からないが)ことは周知の事実だが、隣国アイルランドなど、同じカトリック国だという事情もあって、人口比で言うとより多くのポーランド系移民がいる。
首都ダブリンでは、200万に満たない人口のうち10万強をポーランド系が占め、アイルランド共和国全体で言うと、ポーランド語を母国語とする人の数(約50万人)が、アイルランド古来のゲール語を話せる人の数を、とっくに上回っているそうだ。これを、
「移民が伝統文化を破壊するというのは、事実なのだな」
と考えるか、
「国境がなくなるとは、具体的にはそういうことだろう」
と割り切るかは、人それぞれの価値観だろうとしか言いようがない。
▲写真 ダブリンの夜の街並み 出典:Photo by Trevah(Public Domain)
ひとつだけ、伝統文化とは別の問題を指摘しておくと、ここ数年、奨学金の踏み倒しが増えて、各国で問題視されている。ヨーロッパでも多くの国で、財政事情から奨学金には返済義務があるのだが、すでに述べたように、出生地と進学先、それに就職先がそれぞれ別の国、というケースが珍しくなくなってきているのに、奨学金のシステムは相変わらず国単位で運営されている。自国で奨学金を借りて別の国の大学で学び、さらに第三国で就職されたら、もはや取り立てもままならない。
この記事に関連するニュース
-
ロシア・中国・北朝鮮に囲まれた日本は絶体絶命…トランプ2.0のウクライナ支援"撤退"がもたらす窮地
プレジデントオンライン / 2024年11月28日 10時16分
-
結局「ポピュリズム」とは何なのか...世界中が「極端な政党」に熱狂する理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月20日 17時20分
-
「移民・難民をアフリカへ」知られざる欧州の転換 受け入れの理念から強硬策へ舵を切る国々
東洋経済オンライン / 2024年11月20日 8時0分
-
【1989(平成元)年11月9日】ベルリンの壁崩壊
トウシル / 2024年11月9日 7時30分
-
【1993(平成5)年11月1日】EU発足
トウシル / 2024年11月1日 7時30分
ランキング
-
1時速194キロ暴走は危険運転 遺族「当然の判決」 量刑には疑問も
毎日新聞 / 2024年11月28日 21時0分
-
2セブンの一部店舗、「万引き犯」とされる人物の顔写真を公開 SNSでは賛否両論...本部の見解は?
J-CASTニュース / 2024年11月28日 18時48分
-
3原発の汚染水処理めぐり12億円を詐取か…64歳の会社役員の男を逮捕 架空の発注があったかのように装った疑い
MBSニュース / 2024年11月28日 19時40分
-
4「僕は無実です。独房で5年半くじけずに闘い続けて良かった」2歳女児への傷害致死罪に問われた父親に『逆転無罪判決』
MBSニュース / 2024年11月28日 18時25分
-
5財源明確化、国民民主に求める=年収の壁で「論点」提示―自公両党
時事通信 / 2024年11月28日 16時5分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください