2018年「国際秩序の風化」進行中
Japan In-depth / 2018年12月27日 19時35分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2018 #52」
2018年12月24-31日
【まとめ】
・2018年は世界中で進んでいた「国際秩序の風化」が顕在化。
・「非核化」進展がないまま、南北関係だけ「進展」。
・トランプ「中東での戦争に利益無し、中国に集中すべし」との戦略的判断か。
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今年最後となる本原稿を早朝の福島県いわき市で書いている。2018年のクリスマスは東京電力の福島第一原子力発電所の見学だ。これから「廃炉資料館」を経て発電所に向かい、多核種除去施設、タンク、サブドレンピット、地下水バイパス、遮水壁、原子炉建屋、廃棄物保管エリアなどを見せてもらうことになっている。
東日本大震災の記憶は今でも鮮明だが、諸外国では「フクシマ」というだけでまだ誤解や偏見が残っているらしい。その実態はどうなのか、何が達成され、如何なるチャレンジが残っているのか。これらを実際にこの目で見たいと思っていた。今回の結果は今週木曜日のジャパンタイムスのコラムに書く予定なので、ご一読願いたい。
▲写真 福島第一原発(2011) 出典:Wikimedia Commons
それにしても2018年は散々な年だった。東アジア方面では、元旦から北朝鮮に振り回され、こともあろうに米国大統領がそれに便乗し、首脳会談こそ開かれたが、「非核化」に進展がないまま、南北関係だけが「進展」するというお粗末だ。挙句の果てが、米中関係や日韓関係の険悪化だが、これらについても出口は全く見えない。
中東はどうか。元々状況は良くなかったが、サウジ人ジャーナリスト殺害事件が起きて以来、中東地域、特に一部のアラブ諸国が如何に国際的常識とは異なる行動原理で動いているかを思い知らされた。永年この地域を見て少々のことでは動じないつもりだったが、40年経ってもこの地域の政治家たちにはやはり驚かされる。
▲写真 ジャマル・カショギ(2011) 出典:Alfagih at Arabic Wikipedia
しかし、その中東の煮ても焼いてもの連中を驚かし続けているのがトランプ氏だ。極め付けは「シリアからの米軍撤退」で、トルコ大統領との電話会談の最中に飛び出したらしい。これでは外交安保問題を担当する閣僚・補佐官のなり手がいなくなるのではないか。この大統領の下で責任をもって政策を実施することが難しいからだ。
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