アメリカvsイラン全面対決へ ~2019年を占う~【中東】
Japan In-depth / 2019年1月4日 18時34分
大野元裕(参議院議員・中東調査会客員研究員)
【まとめ】
・米の過度なイスラエル寄りの政策が中東の混乱を増幅。
・パレスチナ人の孤立と無力感の増大傾向は継続する。
・米、対イラン制裁強化の期限迎えイランと制裁通じ全面対決へ。
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2018年も、中東は安定に至らなかった。イスラーム国(IS)の影響力は大きく後退したものの、冷戦終結とほぼ時を同じくして発生した1990年のイラクによるクウェイト侵攻以降の混乱は、シリア内戦並びにイエメン内戦への各国の介入、トランプ米大統領政権による過度なイスラエル寄りの政策によるアラブ域内の分断や対イラン強硬政策、湾岸諸国間の対立などにより増幅された。
このような混乱は、残念ながら2019年も継続する可能性の方が高い。昨年末にトランプ大統領が2000名の駐シリア米軍撤退を表明し、国内においてはマティス国防相辞任、外においては、すでに大きく後退していた米国のシリアでの役割の終結を決定づけた。
シリアでは、昨年末までにアサド政権により大衆蜂起はほぼ制圧された。残る武装勢力の争いは、元来、イラクとトルコの影響力の強いユーフラテス川東部及び北部のイドリブ県を舞台とすることになった。イドリブは、米国の影響力後退を受け、ソチ合意で危うい停戦が保たれているイラン・ロシア・トルコの関係次第では戦闘に発展する可能性がある。
写真)イラン、ロシア、トルコの各国首脳 左から露プーチン大統領、イランロウハニ大統領、トルコエルドアン大統領
出典)Twitter : Fars News Agency
4か月後に完結とも言われる米軍撤退を受けてシリア北東部では、米軍の支援を受けてISと戦ってきたクルド勢力に対し、トルコが掃討作戦の準備を進めている。これに対し、クルド側はアサド政権の庇護を求めているようだ。米国との綱引きの道具にするため、イランはアサド政権を後押しする可能性があるが、トルコとの紛争リスクをアサド政権が負うかは疑問である。
写真)シリア北東部ハサカに展開する米軍とクルド人民防衛隊 2017年5月
出典)Qasioun News Agency (Public Domain)
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