アメリカvsイラン全面対決へ ~2019年を占う~【中東】
Japan In-depth / 2019年1月4日 18時34分
またイランは、シリア国内で直接米国と取引する機会を逸した感もあるが、シリア国内のイラン系部隊及びレバノンのヒズボッラーを利用して、イスラエルに隣接するゴラン高原での活動を活発化させることにより、イスラエルを刺激することで米国に対するレバレッジを確保しようとするかもしれない。
そのイスラエルは、トランプ政権、特にクシュナー米大統領上級顧問及びジェルサレムに移転した大使館の主たるフリードマン大使の影響力が強く見られる米国の後押しを受け、占領地の法的地位の変更、入植地の拡大、海岸部の壁等に代表されるガザ地区封じ込め等を進めてきた。アラブ・中東諸国の分断やジェルサレムへの大使館移転に踏み切る国の増加、パレスチナ人難民支援の国連機関UNRWAに対する米国の資金提供凍結等もあり、このままではパレスチナ人の孤立と無力感の増大傾向は継続することになるであろう。
写真)米の在イスラエル大使館エルサレムへの移転式典に出席するクシュナー米大統領上級顧問と妻のイバンカ大統領補佐官、イスラエルネタニヤフ首相(左)2018年5月14日
出典)米在イスラエル大使館
このような中、米国政府は、パレスチナ政府と親米アラブ諸国への圧力を通じて、これまでの国連安保理諸決議に基づく中東和平にとらわれない最終的地位に関する合意を推進しようとしているとも言われている。対中政策、対北朝鮮政策等の進展次第では、トランプ政権がパレスチナ問題で得点を得ようと舵を切る可能性は否定できない。その場合、パレスチナ人はアラブ諸国からの伝統的な支援を得られずに孤立無援に陥る可能性もあり、将来に向けた禍根を残すかもしれない。
米国とイランとの関係は、本年も悪化しそうである。トランプ政権では発足以来、多くの異動が見られているが、それでも共通点は「イラン嫌いがそろっていること」で、嫌イラン政策を止める要人は見当たらない。確かに、イランとの勢力均衡を保ち続けてきたアラブの「東岸の雄」サッダーム政権がいなくなり、イラクにイランの影響力が伸長、シリアにおいてもアサド政権がイランに大きく依存、イエメンでもサウディの冒険政策がイランの存在感を強め、さらにはISに抵抗する上でイランの後ろ盾を必要とした国もあり、結果としてこの10年でイランは大きく影響力を伸長させた。米国にとってこのようなイランは、脅威に思えるかもしれない。米国は、昨年11月に猶予した対イラン制裁強化の期限を迎え、イランと制裁を通じて全面対決することになる。
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