仏陸軍スコーピオン計画と陸自装甲車調達(下)
Japan In-depth / 2019年1月20日 23時32分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
【まとめ】
・陸自装甲車輌は近代化されておらず、稼働率は低く維持費用は高い。
・装甲車輌調達の総合的な計画を立て、近代化を進めるべき。
・陸自のネットワーク化も一気に進めるべきである。
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前回フランス陸軍の進める、装甲車輌群の調達計画、スコーピオンの概略を説明したが、これは陸軍の中核となる装甲車輌群のポートフォリオを一気に更新するシステムであり、同時に多様な現用車輌の統合も行われる。つまり陸軍の装甲車輌を俯瞰的に見て体系的に更新するものである。のみならず、現在5種類のネットワークシステムを1種類で更新し、集中的にネットワーク化も進めることによって、全軍のネットワーク化を迅速に実現するものである。
オーストリア陸軍はランド400という同様の計画が存在するが、ネットワーク化が進み、陸軍装備をシステムとして考える必要が増大した現在このような大きな構想を元に装甲車輌の役割を有機的に検討し、計画的に調達する必要がある。
▲写真 ジャガー 提供:筆者
対して陸上自衛隊はどうだろうか。陸自には70~90年代に採用された装甲車輌が多数あるが、これらを近代化する計画も更新する計画も殆ど存在しない。例えば73式装甲車、82式指揮通信車、87式偵察警戒車、87式自走高射機関砲、89式装甲戦闘車、90式戦車、96式自走120ミリ迫撃砲、96式装甲車(一応新型8輪装甲車で更新される予定だが、その間の近代化される予定もない)、99式自走榴弾砲、MLRS、軽装甲機動車などである。
▲写真 MLRS(多連装ロケットシステム 自走発射機M270)出典:flickr(JGSDF:陸上自衛隊)
これらは殆ど近代化らしい近代化もリファブリッシュも行われていない。旧式車輌でもエンジンをオーバーホールないし換装し、電気系統を取り外して一新するなどのリファブリッシュを行えば稼働率は格段に向上するが、これをやっていない。まして近代化もされていない。エンジン、武装などの換装、増加装甲の装着、状況把握システム、リモート・ウェポン・ステーション等の搭載、バトル・マネジメント・システムとネットワーク化などを行えば戦力として維持することも可能だ。
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