海自リチウム潜水艦 中国海軍に脅威
Japan In-depth / 2019年1月30日 1時23分
文谷数重(軍事専門誌ライター)
【まとめ】
・海自は潜水艦電池のリチウム化を開始した。
・目的は南シナ海でのゲール・デ・クルース(巡洋艦戦略)。
・期待効果は中国海軍力の分散である。
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リチウム潜水艦「おうりゅう」の完成が間近い。水中動力を変更した最新艦である。従来は浮上状態ではディーゼル、水中では鉛電池とAIP(Air-Independent Propulsion:非大気依存推進)と呼ばれる水中エンジンを用いていた。そのうち後2者をリチウム・イオン電池に改めた新基軸艦である。
リチウム電池採用により水中行動力は一挙に拡大する。電池容量はおそらく8倍程度に増加する。リチウム電池の容量は鉛電池の4倍以上ある。また、撤去されたAIPエンジン部分にもおそらくリチウム電池が設置される。つまり容量4倍の電池を2倍積み込むのだ。
海自はこのリチウム潜水艦で何をしようとしているのだろうか?南シナ海でのゲール・デ・クルース(guerre de course)である。旧軍では「巡洋艦戦略」と訳された海軍戦略である。リチウム化による性能向上、具体的には長距離展開能力、戦域内移動力、接敵能力の強化はそれへの指向を示している。またAIP撤去も従来の待ち伏せ主要からゲリラ戦への変化を示唆している。
海自はそれにより中国海軍力の分散を目論んでいる。潜水艦を広範囲に行動させる。南シナ海あるいはマラッカ西方まで展開させる。それにより中国に広範囲での潜水艦対応を強要する。また中国に南シナ海防衛を強要し、対日正面戦力の転用・減少を狙うアイデアである。
■ 長距離展開が可能となる
「おうりゅう」登場はゲール・デ・クルースへの転換を示している。リチウム電池化で得られる諸能力、長距離展開の実現、戦域内移動力の向上、接敵機会増大はそのための性能向上だからだ。
なによりも長距離展開能力はゲール・デ・クルースに必須である。本旨となる遠洋展開力そのものだ。ありとあらゆる海洋に軍艦を展開し、敵に脅威を与え敵海軍力の分散を強制する。そのためには欠かせない。
リチウム化はそれを実現した。海自潜水艦は倍以上も遠くまで進出できるのだ。南シナ海展開は今よりも容易となる。あるいはマラッカ西口展開も実現性を帯びる。電池容量拡大と充電時間短縮の成果だ。
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