海自リチウム潜水艦 中国海軍に脅威
Japan In-depth / 2019年1月30日 1時23分
今日、在来潜水艦は基本的には潜水状態で移動する。水中移動して、ディーゼルで充電してを繰り返す。スノーケル航行による移動はあまりやらない様子である。当然、移動力は制限される。鉛電池型では最大でも4kt(7km/h)、100時間、400nm(740km)程度だ(*注)。それで電池切れだ。そして充電を完了するまで10時間位はかかる。実際は放電量1/3~1/4で小充電をするのだろう。ただ能力はその程度である。
それがリチウム化により2-4倍となる。電力容量8倍はそれを可能とする。速力2倍で消費電力を4倍としてもなお2倍の時間移動できる。8ktで最大200時間、1600nmを移動できるのだ。
しかも充電時間は従来のままだ。リチウム化で充電速度も約8倍程度に上がる。充電電流量は5倍となり電力量から貯蔵量への変換効率も1.5倍となる。つまり7.5倍だ。8倍容量の電池でもほぼ同じ時間で充電できる。
これはゲール・デ・クルースに有利である。より遠方まで進出して潜水艦脅威を与えられる。計算上、鉛電池では呉―バシー間は2週間程度を要する。それがリチウムでは6日半となる。さらには呉から10日で南沙諸島まで展開可能となる。
▲図 呉軍港からバシー海峡まで(1200nm)の所要時間 作成:文谷数重
■ 戦域内での移動が容易となる
また戦域内移動力も向上する。同様にリチウム電池による行動力向上の恩恵である。
これもゲール・デ・クルースに都合がよい。1隻の潜水艦で南シナ海全体に脅威を与えられる。たとえば台湾海峡で中国艦船を攻撃し、4日間で南沙諸島に移動して再び中国艦船を攻撃し、また3日間で海南島に移動して3たび中国艦船を攻撃する。そのような行動が可能となる。
その効果は大きい。中国は南シナ海全体での対潜戦を強要される。提示例なら3海面に対潜部隊を展開する。「日本潜水艦はもういない」と判断できるまではそうする。
これは対潜努力の強要に向く。「潜水艦は乗員数で400~600倍の敵海軍を拘束する」ともいわれる。乗員65人の海自潜水艦1隻は1海面で中国海軍を3万人づつを拘束する計算となる。3海面並行しての対潜戦なら拘束規模は合計9万人にも及ぶだろう。
▲図:戦域内移動の概念 作成:文谷数重
■ 攻撃のチャンスが増える
最後が接敵機会拡大である。これもリチウム電池による高速化の成果だ。中国艦船を攻撃可能な位置に収めるチャンスが増えるのである。これもゲール・デ・クルースに資する。短期間で潜水艦脅威を顕在化できるからだ。また移動先海面で短期に成果をあげ、すぐに別海面に転進できる。
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