トランプvsべゾス 対立と融和の愛憎
Japan In-depth / 2019年2月9日 23時0分
こうした構図の中で、トランプ氏に近いペッカー氏が「忖度」をしてベゾス氏の不倫ネタや写真を入手し、脅迫状を送付することになったとの見立てだ。
ベゾス氏は、「トランプを(自身の運営する宇宙企業「ブルー・オリジン」のロケットで)宇宙に放出してやる」などと過去に発言したこともあり、明らかに恨みを買う立場にあった。
一方のトランプ大統領は、「ワシントン・ポスト紙はクソ新聞」「ベゾスの新聞はアマゾンの税逃れのために運営されている」「同紙はフェイクニュースだ」などの発言を繰り返してきた。2人は、メディアという戦場では「宿敵」なのだ。
さらに、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いで、ベゾス氏が経営するアマゾンまでも攻撃する。たとえば、「ベゾスのアマゾンは独占禁止法違反だ」「アマゾンにインターネット税を支払わせるべきだ」「アマゾンは注文を受けた商品に対する州税を払っていない」「アマゾンは米郵政公社に不当に安く商品を配送させて、何十億ドルものカネを節税している」「アマゾンは不当な競争で多くの小売業者を倒産に追い込んでおり、不公平だ」などのツイートがそれに当たる。
■ 実は共通の利益を分かち合う2人
このように、メディアの論調の面では対立しているように見えるベゾスCEOとトランプ大統領だが、その敵対は実は表面的なものに過ぎない。
トランプ大統領は、米中貿易戦争の一環であるテック戦争において、米テクノロジー大手を勝たせなければならず、その中で重要な地位を占めるアマゾンを本気で弱体化させるわけにはいかない。電子商取引やクラウド、さらにインターネット広告で巨大な存在であるアマゾンという米テクノロジー大手の一角が欠けてしまえば、中国のアリババやテンセントは倒せないのだ。
事実、トランプ大統領はアマゾンの「独占禁止法違反」に繰り返し文句をつけるが、2017年に同社による高級生鮮スーパーのホールフーズ買収を認可している。本当に政権がベゾスCEOの会社を「独禁法違反」と見なしているのであれば、アマゾンをさらに大きくさせる許可を出すわけがない。
また、トランプ政権が2017年12月に成立させた包括的税制改革法は、最高法人税率を35%から21%へと大幅に引き下げる一方、高い税率ゆえに米大手企業が海外で税逃れ的に留保していた巨額の利益を米国に持ち帰る際の税率を、さらに低い15.5%にすることで、米テクノロジー企業の財政基盤を数兆億円規模で大いに強化した。
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