民政移管のタイ総選挙、タクシン派vs軍政 王室絡み複雑化
Japan In-depth / 2019年2月14日 14時6分
大塚智彦(Pan Asia News 記者)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・プラユット軍政の民政移管後、最大の障害は海外逃亡中の2人の元首相。
・改名や王女の出馬など各党は究極の「奇手」に打って出ている。
・過半数獲得が困難な状況で、各党は選挙後の動きを画策。
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タイは3月24日に投票が行われる総選挙(下院・定数500議席)に向けて政治経済社会の全てが急激に動きだしている。これまで各政党が立候補者と政党が擁立する首相候補者をそれぞれ中央選挙管理委員会に届け出を済ませ、現在は選管による正式な立候補者の発表を待っている段階で、今後発表を経て本格的な選挙戦がスタートする。
非公式な数字では議員に80政党から13846人が立候補し、首相候補には45政党が69人を届け出ている(首相候補は各党3人まで可、国会議員選挙後に上下院で選出する仕組み)。
2014年5月に軍によるクーデターで政権を奪取した軍政のプラユット首相は長年の国民の願いであった民政移管のための総選挙実施を決断するにあたり、親軍政政党の結党とそこから首相候補として出馬することで民政移管後も政権を維持する環境を整えた。
プラユット軍政の民政移管後の政権維持の最大の障害となるのは軍政の訴追を逃れるために海外で「逃亡生活」を送るタクシン元首相とその妹インラック前首相である。
タクシン元首相派北部や東北部の農村地帯、さらに貧困層の根強い支持を得ており、タクシン支持派の「タイ貢献党」とその分党である「タイ国家維持党」は反軍政票を取り込み政権奪取への道筋をつけようとしている。
▲写真 プーチン大統領と面会するタクシン元首相(2005)出典:ロシア大統領府
■ 各政党による選挙戦術、王女擁立も
親軍政、タクシン派に両者と距離を置くアピシット元首相率いる「民主党」、実業家出身のタナトーン党首の政党「新未来党」などによる激しい票の奪い合いが予想されており、単独での過半数維持は困難とみられている。
そこで各政党、支持派による選挙戦術が公示前から空中戦を展開する状況となっている。
候補者届け出締め切りが近づくにつれて、タクシン支持派が多い地方で「タクシン」候補や「インラック」候補が林立する事態となった。これは知名度のある2人の名前にあやかろうと候補者が改名した結果で、男性の「タクシン」候補が10人、女性の「インラック」候補が4人出現した。選管や軍政などは「改名は違法ではない」としながらも、知名度を「悪用」した手法には苦虫を噛み潰すしかなかった。
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