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日本の救命教育は世界水準の半分以下~世界が挑戦 市民への統合型救命教育~3

Japan In-depth / 2019年2月22日 18時0分

教育頻度も重要だ。アメリカの救命手当教育の研究では、半年で教育直後の60%まで、記憶や技術が低下することが明らかになった。そこで、アメリカでは会計年度始めである9月に国際赤十字のWorld First Aid Dayなどの機会を活用して救命教育を行い、半年後の3月31日をNSTBD:National Stop The Bleed Dayとして定め、全アメリカ国民が救命について学ぶ日とすることで、国民の救命手当における知識と技術の質を維持することに努めている。



▲写真 ITLS国際会議2018で推奨された様々な止血用救急品 ©照井資規


中央の黒いパッケージは包帯状止血剤(血液凝固促進剤製剤包帯)ChitoSAM™100、その右隣が世界一と言われる救命止血用SAM XT、両隣のタンカラーのパッケージがモジュール型緊急圧迫止血用包帯 OLAES® Modular Bandage(https://www.tacmedsolutions.com/OLAES-Modular-Bandage)一番右端がネックカラーにもなる自在副子SAM®Splint(自衛隊で言うロール副子)


救命手当と言えば、日本ではCall Pushであるが、これでは非外傷性心肺停止しか対応ができない。海外ではCall CAB(「タクシーを呼べ」)で子供でも知っている簡単な言葉で手順を憶える。通報して、


CAB: Circulation, followed by Airway and Breathing


と循環状態から必要な救命手当を判断していく。2011年以前は意識レベル+ABCDEFアプローチと気道、呼吸、循環と手順を教えてきたが、救急医療でもCABと、循環から始めるようになった。健康で重篤な既往症もない、十分に酸素化されている人(高山のような酸素の薄い場所にいない)が銃創、爆傷、刃物による致命的外傷を負った場合、もっとも多い死亡原因は大量出血である。Airway and Breathing(「気道と呼吸の異常」)も生命に危機をもたらすが、受傷後3分くらいは体内に蓄積された酸素で生命を維持できる一方で、致命的大出血は1分で死亡率が50%に達するので、大出血を制御することが最も優先されるためである。


循環状態の評価から非外傷性心肺停止から致命的外傷まで総合的に対処する。循環状態をPump(「心臓の機能」)Tank(「循環血液量」)Pipe(「血管の状態」)で評価し、優先度の高い順に介入していく。心停止であれば「Pump 直ちに心肺脳蘇生」、銃創を受けて血管を損傷して大出血ならば「Pipe まず出血している場所を塞ぐ」というように、迅速に的確に対応していく。救急隊は市民による救命手当を引き継ぎ循環状態の観察からショック4種、心停止、頭部外傷の早期発見に努める。


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