海自ミサイル艇を廃止のわけ
Japan In-depth / 2019年3月11日 15時20分
■ 専用装備の需要喪失
第3の原因は専用装備の不要化だ。かつて対艦ミサイルはミサイル艇や大型爆撃機でしか運用できなかった。それが小型軽量化により各種の装備から発射可能となった。専従装備のミサイル艇を整備する必要はなくなったのだ。
70年代中期までは専用艇が必要とされた。ミサイルは大型である。普及型のスティックスでも全長6m、幅3m、重量2トンある。既存艦艇には簡単に搭載できない。また実用射程も40㎞未満と短い。攻撃時には接近せねばならず、そのために敵を翻弄できる時速70㎞以上の高速性能が期待された。手っ取り早い解決法は専用艇の建造であった。
だが、ミサイルの小型化により状況は変化した。70年代後半に登場したミサイル、エグゾゼやハープーンは収納状態で直径50㎝以下となり重量も600キロ程度まで減少した。既存軍艦の空所に設置可能であり、あるいは既存のランチャーでも発射可能だ。射程も100㎞を超えている。無理に攻撃位置につく必要もなくなった。
なによりも戦闘機やヘリ、トラックに搭載できるようにもなった。それによりミサイル艇の必要性は大きく減じた。ミサイル射程の延伸もあり「沿岸部や海峡防衛ならそれで充分」と判断されたのだ。
写真)ペンギン〈対艦ミサイルは多手段で発射できるようになった。たとえば米海軍はペンギン・ミサイルをヘリ運用している。ミサイル艇よりも高速であり攻撃の自由度は高い。〉
出典)AMERICA’S NAVY FORGED BY THE SEA: Photographer’s Mate 2nd Class Lisa Aman
■ 時代遅れのミサイル艇整備
ミサイル艇の価値喪失したのだ。しかもそれは80年代には明らかであった。
実際にミサイル艇の整備中止も始まっている。例えば米海軍はペガサス級水中翼ミサイル艇の建造は80年で取りやめた。完成した既存艇も90年代初頭に退役させた。伊海軍も同様である。小型の水中翼ミサイル艇の建造を取りやめ、やはり90年代に既存艇を廃止した。
だが、90年代以降にミサイル艇の建造を始めた。冷戦終結以降のことだ。それも各国でいまなお残る多用途型ではない。高速性能をもった攻撃専従艇、一番使いにくいタイプを建造したのだ。
それからすれば中期防・大綱での整理は当然の話である。本来は建造すべきではない戦力であった。
トップ写真)ミサイル艇「くまたか」〈ステルス性を重視し時速80kmを超える高速艇である。だが後継はなく艦種ごと廃止される見込みである。〉
出典)海上自衛隊HP:写真ギャラリー
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