イギリスの日本人留学生~ロンドンで迎えた平成~その3
Japan In-depth / 2019年3月30日 11時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・映画や歌手の影響で、英「聖地巡礼」を望む日本人は少なくない。
・好景気を背景にロンドンで暮らす日本人は増加。
・文化や語学などを「正確に知る」ことはとても難しい。
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ある雑誌で、1970年代初頭に日本でヒットした『小さな恋のメロディ』について書いたところ、今もロンドンで暮らしている知人の日本人女性から、「実は私、あの映画に憧れてロンドンに来たんです」などとカミングアウトされたことがある。
いや、カミングアウトなどというような、人に聞かれて恥ずかしい話ではないと思うが、これはあくまで私の個人的な感想で、違う受け取り方をする人も多いのかも知れない。
ちなみにその女性だが、ロンドンに来る以前から英会話学校に通っていて、たまたまロンドン出身で、東京でくだんの映画を見たこともある(実は英国ではまるでヒットしなかった)講師に、是非とも映画の舞台となった場所を歩いてみたい、と言ったところ、「あまり治安がよくないから、日本人女性の一人歩きはお勧めできない」という答えが返ってきたそうだ。
たしかに、テムズ河口近くの下町で、失業率も高く、治安はあまりよくなかった。2012年のロンドン五輪を前に大規模な再開発が行われたが、さかのぼること30年あまり、1970年代の半ばには、そのような変化が起きようとは誰も予想してなどいなかったのだ。
彼女はまた、縁あって英国人男性と結婚し、永住権まで取得することとなったわけだが、「主人も息子も(映画の主人公を演じた)マーク・レスターとはほど遠いヴィジュアル」と語ったこともある。
▲写真 マーク・レスター 出典:Allan warren
これぞカミングアウトだが、あなたも(ヒロインの)トレーシー・ハイドではないから、と喉まで出かかった言葉を飲み込んで、世の中そんなものですよ、と言うにとどめておいた。
ロンドンで長年、主に日本人相手の不動産業を営んでいる知人からは、
「毎日アビー・ロードを歩きたいので、あの近くで家を見つけて欲しい」
という注文を受けたことがある、と聞かされた。
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