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新防衛大綱・中期防を読む(下)

Japan In-depth / 2019年4月3日 23時0分


▲写真 イージス・アショアには費用対効果、実用性に疑問が多い 写真提供:清谷信一


大綱には新しい部隊を設立することが明記されている。イージス・アショアを運用する2個防衛隊、島嶼防衛用高速滑空弾部隊が2個編成されることになる。更に水陸機動団は1個連隊が追加されて当初の予定通り約3千名の陣容となる。


水陸機動団に関しては既存の普通科連隊の転用だが、前記2つの部隊は新編成になるだろう。が、人員の手当はどうするのか。更に申せば大綱には明言こそされていないが、海自・空自の基地警備も陸自が担当するという構想もある。大綱では人員を大幅に増強することなく、現状維持としているが、果たして別表に載っている部隊をすべて維持できるだろうか。この点からも戦車、火砲の早急な削減が必要ではないのか。



▲写真 水陸機動団 出典:陸上自衛隊ホームページ


そもそも期間や終了時期が明記されていないものは「計画」ではない。これを計画と称するのは無責任であるし、仮想敵国から与しやすい、とみられるだろう。また同盟国からも信頼も失うだろう。防衛省、陸幕は戦車、火砲削減のスケジュールを出すべきだ。筆者は次期中期防中に実施するべきだと考えている。


イージス・アショアに関しては問題点も多い。防衛省は調達予算を各1224億円としているが、多くの報道からこれは現実的でないことは明白だ。しかも、拠点防御の対空システムや対迫撃砲などのシステムも必要で、恐らく各3000億円は超えるだろう。既に米国からは試験費用の負担も打診されており、どれだけコストが膨らむか分からない。


コスト的にいえばイージス艦(あるいはコンテナ船などのシステムを搭載)の方が安上がりだ。また周辺住民の理解を得るのも難しい、電波法のからみでレーダーを使用できるかもわからない。実際海自のイージス艦がレーダーに火を入れるは陸地から50海里離れてからだ。更に採用されたレーダーが海自のSPY6と異なるSSRが採用されて互換性がない。訓練も別々に行わないといけない。これもコストアップの要因となる。しかも基地防衛にかなりの人数の陸自要員が必要とされる。そもそも論で言えば固定式なので敵の攻撃に弱い。



▲図 高速滑空弾イメージ図 出典:防衛省・自衛隊ホームページ 平成30年度 事前の事業評価 評価書一覧 島嶼防衛用高速滑空弾の研究より


島嶼防衛用高速滑空弾部隊も必要なのか。これは政治的な理由から弾道弾導入を避けたいという理由だが、射程500キロや1000キロであれば弾道弾であろうが、このような滑空弾であろうが同じ話だ。この主の用途であれば弾道弾でも問題ないし、開発も調達コストも遥かに容易だ。政治の言葉遊びのために敢えて開発・調達コストがかかり、実用性も怪しい高速滑空弾を導入する理由はない。


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