新防衛大綱・中期防を読む(下)
Japan In-depth / 2019年4月3日 23時0分
衛生関連では陸自に装甲野戦救急車の導入が明記されている。装甲野戦救急車は我が国からODA(政府開発援助)を受けている途上国でも当然の装備として保有している。ところが陸自がこれを1両も保有していないことは筆者が繰り返し述べてきたことだ。だが本来中期防でわざわざ触れるような内容ではないだろう。恐らくは中期防に明記しないと陸幕が導入を怠ると、内局あるいは首相官邸から見られているからではないか。
▲写真 米軍の装甲野戦救急車(M1133 ストライカーMEV)出典:Public Domain/U.S. Army Medical Department photo (Wikimedia Commons)
大綱、中期防に何が書かれていないかも重要な情報である。今回特殊部隊に対する記述がなかった。現代の軍隊では情報収集を中心に特殊部隊の活躍する場は多い。このため多くの国々で特殊部隊の高度化、拡大を図っている。
ところが自衛隊では特殊部隊の創設が遅く、また陸自の特殊作戦群はわずか300名、海自の特殊警備隊が100名程度であり、かれらの兵力投射手段はそれぞれ特殊仕様のUH-60とMCH-101だけであり、小型ヘリ、固定翼機、潜水艦などの手段がない。欧州ではフリゲイトなどにも特殊部隊を運用するプラットホームとして機能をもたせる国が存在するが、島嶼防衛を本気で考えるならば特殊部隊の拡大と兵力投射手段の充実を図るべきだ。
(了。上の続き)
トップ写真:旧式化したAH-1Sの維持に今後500億円はかかるという 写真提供:清谷信一
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