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災害救援受け入れのメリット

Japan In-depth / 2019年4月21日 11時0分

なによりも損はない。災害救援への感謝は何の約束を伴わない。またコスト負担もない。それで隣国との関係を改善できる点で費用対効果は極めて高い。


 


■ 日本の国民感情抑制


第二の効果は日本国民感情の緩和である。救援受け入れは中韓朝への拒絶的態度を緩和させる材料となる。この点でも利益は大きい。


中韓朝への国民感情は厳しい。安全保障での対立から日本人は中朝を敵国と扱っている。韓国も歴史問題での対立から敵対国とみなしている。いずれも「滅ぼすか滅ぼされるか」の宿敵ではない。それにもかかわらず不倶戴天の敵とみなされているのだ。


その弊害は大きい。なによりも日本政府による政策選択を不自由としている。国民感情から隣国との協調や妥協策の選択は困難となってしまった。また、損しか産まない非合理的な選択を迫られている。これも災害救援の受け入れにより改善する。中韓朝が善意で助けに来てくれた。その事実や報道で国民感情は緩和するためだ。



▲写真 中国は災害救難に熱心だ。特に海軍力の急成長と海洋主権の強引な主張への反感緩和から病院船活動を熱心に行っている。写真は医療船「岱山島」号、平和方舟と称されている。 出典:米海軍写真(撮影:Shannon Renfroe)


救援による国民感情緩和の実例は多い。日本国民の感情との関係で言えば、まずは東日本大震災での米軍救援の例だ。在日米軍では厄介者である在沖海兵隊までもが好意を持って受け入れられた。それにより「米海兵隊は駐留不要」の主張は一時的に弱まったのである。


古くは関東大震災の例もある。米国は食料1万8000トン、衣類55万枚、病院施設6000床分を援助した。これは斉藤達志さんの『軍事史学』での発表の数字だ(※2)。救援の効果は戦争中の国民世論にまで及んでいる。内務省による戦時下言論取締には「米国は大震災の救援に来てくれた。米国に負けても日本には悪いことはしない」といった発言が摘出されている。感情緩和の効果は相当に大きいのである。


頑なにすぎる隣国への国民感情を解きほぐす。あるいはそれにより毀損されている政策自由度を回復する。そのような効果も期待できる。


 


■ 排外デマの抑制


第三は排外デマや迫害の抑制である。大災害では決まって外国人犯罪のデマが流れる。かつての「井戸に毒を入れた」や、東日本大震災での「外国人が遺体から手指ごと指輪や時計を剥いだ」といった差別や排外主義に基づいたデマだ。きまって中韓朝国籍や出身者のせいにされる。


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