金正恩、再び軍事挑発の狙い
Japan In-depth / 2019年5月15日 12時3分
外務省がこのような状態では、とても米国との外交を展開できないであろう。外務省だけでなく現在北朝鮮内では、金正恩の能力に疑問を持ち反感を募らせる人たちが増えているという。結局金正恩は、軍事的挑発で権威を回復させトランプを動かす道しかなかったようだ。
また経済の想像以上の悪化が金正恩をせき立てている。これも焦りにつながっている。世界食糧計画(WFP)などは、今年、北朝鮮は食糧必要量に対して約140万トンが不足すると見ている。経済状況の深刻さについては、すでに昨年末から筆者が「第2の苦難の行軍」が始まったと伝えてきたが、最近になって韓国・日本のメディアも北朝鮮の食糧危機を頻繁に取り上げ始めた。よってここでは詳細を省くことにする。
2)その狙い
今回のミサイル発射の狙いは明白だ。自身の外交的能力ではとても米国に勝てないと考えた金正恩が、毀損した自身の権威を回復し求心力を高めるために、再び軍事的緊張を高めて対米交渉主導権を取ろうとしていることだ。金正恩が発射の場面を公開したのは、国際社会および米国の対北朝鮮制裁に正面から対抗するというメッセージを込めたものとみられる。金委員長はこの日、「強力な力によってのみ、真の平和と安全が保障され担保されるという哲理を肝に銘じよ」と指示したと朝鮮中央通信が伝えた。
また韓国に対する脅迫も狙いの一つだ。文政権に北朝鮮の側に立って動けと圧力を加えているのである。これで韓国軍の防衛体制を崩壊させ、訓練を中断することで「平和」を手にするという幻想に満ちた文在寅式「平和構想」は破たんした。
今こそ文大統領は韓国軍に「武装体制を再整備せよ」と命令を下すべきだが、実際は挑発に乗りだした金正恩の方が「強力な力によってのみ平和と安全が保障されることを忘れるな」とハッパをかけた。あまりにも皮肉な現象だといえる。
トップ写真:北朝鮮が発射したミサイルと視察する金正恩委員長(2019年5月9日) 出典:DPRK twitter
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