僕がドキュメンタリーを撮るわけ 上
Japan In-depth / 2019年5月19日 16時19分
小西: 徹さんのドキュメンタリーは、問題を単に観察的に伝える多くのドキュメンタリーとは違い、各人に意味を引き出させるような、抽象的なメッセージを持っている。それがすごいところ。
▲画像:ミャンマー・ラカイン州 出典:UNICEF/UN0229016/Sirman
Q.ドキュメンタリーをつくる過程について教えてください。
久保田: 韓国のイエメン難民を描いた作品は、ネットニュースの情報を見てから決めたので、ワンテンポ遅れた。フェイクニュースが問題になっているというニュースと、イエメン難民を偽装難民とみなす韓国のひどい記事を見て、日本でも同じことが起きる、あるいはもっとひどい状況になるだろうなと思った時に、企画を立てた。一番に現地に入っていた日本人の方にまず会いに行って、現地の人の連絡先などを聞いて、現地の人とやり取りをして、という感じ。
基本のスタイルは、まずは撮影なしの取材をして、企画書を作って、企画が通ったら本番のロケに行くという流れ。その時は、現地に行く前に企画を通して、いきなり映像を撮った。初めに行って撮ってしまうことが多い。
カメラに抵抗がある人はいるけど、信頼関係がすべて。ミャンマーでは信頼関係を築けているし、イエメンの映像の主人公とはすんなり打ち解けられた。ロヒンギャのことを扱っていた時に「今ミャンマーから連絡してるんだけど」という話もしたから、そういう点も良かったのかな。
小西: テーマは、自分が好きなもの、自分が心動かされたものを選ぶ。例えば、フィリピンで、障害を持つ5歳のストリートチルドレンと、その子を育てる44歳のホームレスという、血縁関係のない二人に出会った。心動かされて、撮りたい、二人を切り口にしてみんなに「愛とは何か」伝えたいと思った。
取材や撮影の途中で、自分の気持ちが企画時と変わることもある。普通は資金の限界があるので、大きな変更はできないが、自分は取材を延長したり、企画を捨てて取り直したりできる環境にいたかった。それが、インスタグラマーとジャーナリストを掛け合わせて活動する理由。メディアに配給する以外の資金の得方として、インスタグラムを使っている。
Q.好きな作家や作品はありますか。
小西: スティーブ・マッカリー。写真家です。
久保田: 『ビルマVJ 消された革命』という作品。2006~2007年、ミャンマー国内は、革命勢力と政府軍の間に衝突が起こる深刻な状況にあった。取材に入ることはほとんどできず、日本人ジャーナリストの長井健司さんが殺害される事件もあった。ミャンマーの混乱した国内情勢を、国際社会がほとんど認識していなかった当時、隠しカメラで撮影した映像をノルウェー経由で世界に発信するビルマ人ジャーナリストがいた。『ビルマVJ 消された革命』は、そのビルマ人たちを撮った、二重構造の作品。
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