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ディオバン事件から学ぶもの

Japan In-depth / 2019年5月26日 11時0分

製薬業界も動いた。日本製薬工業協会(製薬協)に加入する製薬企業は、2013年度分から医師や医療機関に支払ったカネを公開するようになった。


ディオバン事件を反省し、医療界・製薬業界は変わった。特に製薬企業から医療界へのカネの流れが開示されたことは大きい。どの企業とどの医師が連んでいるか第三者が検証できるようになった。


私が主宰するNPO法人医療ガバナンス研究所はワセダクロニクルと共同で、2016年度支払分から製薬マネーをデータベース化して、無料で公開した。


澤野医師たちは、このデータベースを用いて、ディオバン事件に係わった50名の医師たちが、2016年度にどの程度製薬企業から個人的にカネを受け取っていたか調査した。この調査には大学などに支払われた寄付金や共同研究費は含まれない。


その結果は衝撃的だった。論文著者50名中、29名(58%)が製薬企業からカネを受け取っていた。その総額は6418万円で、内訳は講演料5418万円、コンサルタント料673万円、原稿料243万円だった。


受け取った金額の平均は128万円で、5名が500万円以上、3名が1000万円以上を受け取っていた。その3名とは、室原豊明・名古屋大学教授(1433万2156円)、前川聡・滋賀医科大学教授(1132万2051円)、小室一成・東京大学教授(1051万494円)だった。小室教授の前職は千葉大学教授で、ディオバンの臨床研究のトップだった。


問題を指摘された5つの臨床研究では、小室教授と室原教授を除く3名は引責辞任などの形で責任をとっている。教授職に留まったのは小室教授、室原教授だけだ。


ディオバン事件発覚後も、彼らは地位に固執しつづけた。例えば、小室教授の場合、2014年7月に千葉大学が公表した調査報告書では、「虚偽の説明をし続け、調査を混乱させ、長期化させた」と糾弾されている。千葉大学は、小室教授が在籍する東京大学に「しかるべき処分の検討を要請」した。私が知る限り、前代未聞の対応だ。ところが、小室教授はその地位に留まった。記者会見などを開き、自ら説明することもなかった。


東大や医学会にも当事者意識はなかった。千葉大から処分を求められた東大は、前職での問題で自らに処分権限はないとして動かなかった。医学会については、2016年6月、小室教授は日本循環器学会の代表理事選挙に選出された。


トップがこれでは組織は緩む。ツケは患者が払うことになる。その典型は医療事故だ。昨年11月、東大病院で医療事故隠蔽疑惑が指摘され、国会でも議論された(参考「選択」記事)。舞台となったのは小室教授が率いる循環器内科だった。これについても、医療機器メーカーとの関係が指摘されている(参考「Forbes Japan」記事)。知人の東大病院の内科医は「ディオバン事件で小室教授が引責して、やり直していたら、このような事故は起こらなかったと思う」という。


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