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ディオバン事件から学ぶもの

Japan In-depth / 2019年5月26日 11時0分

では、彼らにカネを支払っている製薬企業はどこだろう。前出の3人の教授に対し、年間に100万円以上を支払っている製薬企業は以下だ。



室原教授: 第一三共(163万7143円)、田辺三菱(128万762円)、バイエル薬品(111万3704円)、MSD(106万805円)、アストラゼネカ(105万8018円)、日本べーリンガーインゲルハイム(100万2332円)


前川教授: 日本べーリンガーインゲルハイム(172万6242円)、アステラス製薬(145万円)、田辺三菱(144万7818円)、武田薬品(125万8924円)、第一三共(100万2334円)


小室教授: 日本べーリンガーインゲルハイム(336万3388円)、武田薬品(137万4632円)



この結果をみて、私はさらに失望した。結局、ディオバン事件を経て変わったのは、ノ社だけだったからだ。現在、ノ社は影響力のある医師にカネを払って、処方を増やそうという戦略をきっぱりと止めている。


これはスイス本社の方針が影響している。私の個人的な経験をご紹介したい。


2013年10月、不祥事を受けて、スイス本社のデビッド・エプステイン社長が来日し、謝罪の記者会見を開いた。


その前日、彼は東京大学医科学研究所に私を訪ねてきてくれた。私との面談の最中、彼は日本法人の幹部の名前を挙げ、「どのように思うか」と問うた。私は自分の感想を率直に述べた。彼も概ね同じように考えていたようで、「信頼を取り戻すためにはどんなことでもする」と語った。その後、多くの幹部が更迭され、ノ社は販促の方針を一変した。


さらに「不正にカネを得たのが問題なら、返還せねばならない。どうしたらいいかわからないので協力してほしい」と言われた。私は総理官邸の知人に紹介した。ただ、その後、ノ社からカネが戻されたとの話は聞かない。どこで止まったかわからない。


この事件で変わったのは、ノ社だけだったようだ。私が、今回の調査結果をみて、もっとも驚いたのは日本べーリンガーインゲルハイム社が多額のカネを支払っていたことだ。小室教授にいたっては年間に336万3388円だ。


実は同社の青野吉晃社長は、かつてノ社に勤めていた。営業本部長・執行役員としてディオバンの販促に関わった。ディオバン事件のキーパーソンだ。彼は移籍したところでも、同じことを繰り返していたことになる。


日本べーリンガーインゲルハイム社にとって青野氏は有難い存在だったろう。降圧剤の販促のノウハウとネットワークがあるからだ。


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