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改良型も不首尾なASM-3

Japan In-depth / 2019年6月5日 11時44分

具体的にはダクティングが影響する。全反射現象が発生した場合、全反射面下側と海面の間は光ファイバと同様の導波ダクトとなる。それが悪影響を生む。*4


その時、ダクト内を飛ぶミサイルのマルチパスはどうなるか?


上面反射を含む乱反射が生じる。第1の例に当てはめれば距離8km以内で乱反射が始まる。視差角が大きくなるためレーダ電波は光速変化面を通過しミサイルに届くようになる。だがミサイルで反射して戻る電波の一部は上側の光速度変化面で全反射/部分反射し海面反射を含めて2回、3回とバウンドしてレーダに戻る。それによりレーダ探知はより困難となる。


だが、ASM-3改良型はこの利益も得がたい。極超低空で多発する表面ダクト内を飛行できないためだ。


極超低空を利用できない不利は以上である。ASM-3や改良型には高コスト、命中率不良、低汎用性の不利がある。加えて全反射、干渉縞、複雑マルチパスの利益も得られない。そのためASM-3改良型は不首尾となる。*5


 


■ 超音速ミサイルは筋悪


なお本記事は再反論でもある。


「国産ミサイルはいらない」 で提示した命中率不良にはいくつかの反論があった。「ASM-3(高度10m)とJSMミサイル(5m)の水平線探知距離は29kmと26kmと3kmの差しかない。対して探知から命中までの時間は30秒と100秒と逆転する。よって迎撃時間が短い国産ミサイル有利」といった内容だ。


だが、その主張は極超低空での諸現象を無視している。高度5m以下を飛ぶ亜音速ミサイルは探知、迎撃とも困難となる。その点で迎撃回避や命中率で超音速ミサイルに対して有利に立つのである。



▲写真 雄風3型 超音速ミサイルでは信管動作の確実性も問題となる。台湾の海軍が超音速ミサイルを誤射した際には信管は動作しなかった。信管の信頼性を積み上げていない日本製ミサイルでも同様の不動作は起きうる。写真は雄風3型。 出典:台湾側の『国家中山科学研究院』HPの「雄風三型超音速反艦飛弾」より入手。


 


*1 「長距離巡航ミサイル開発」『日経新聞』2019年3月20日 朝刊 p.4


*2 レーダ高を20m、光速変化面の高さを5mとし、臨界角0.1度で計算すると距離8.5km以遠の光速変化面は全反射つまり鏡面になる。


*3 Anderson,Kenneth D "Radar detection of low-altitude targets in a maritime environment", "IEEE Transactions on Antennas and Propagation" 43(6) (IEEE,New York,1995)pp.609-613.


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