メイ首相辞任後の英国の運命(上)
Japan In-depth / 2019年6月10日 21時32分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・英国の「合意なき離脱」はEUにとってもリスク大。
・英連邦もつ英国の混乱が一時的なら、各国のEU離脱派の勢い増も。
・英国のEU離脱後の問題は経済・貿易面の事柄ばかりではない。
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5月24日、英国のメイ首相は、与党・保守党の党首を辞任する意向を表明した。後任が決まるまで首相の座には留まるが、事実上辞任が予定される6月7日をもって、英国憲政史上2人目の女性首相が率いた政権は、その幕を閉じることとなる。
特に驚きはしなかったが、思ったより早かったな、というのが正直な感想であった。すでに報道されているように、EUからの脱退をめぐって彼女が提示した合意案が繰り返し議会で否決されてしまい、問題解決への道筋をつけられる見通しが、まったく立たなくなったためである。
そもそも論から言えば、彼女が首相の座に就いたこと自体が間違いであったのだ。5月にも英国のEU離脱問題について書かせていただいたが、2016年の国民投票の結果が、キャメロン前首相を含む大半の政治家の予測に反するものであったため、火中の栗を拾う役割を押しつけられ、そして拾うことができなかったと言える。
彼女はまた、「議会のクラブにたむろして人脈を作ることには関心がない」とよく自慢していた。 この点は、わが国の小泉純一郎元首相と似ているが、議会政治において派閥のしがらみなどがないということは、よい方向に作用するとは限らない。
▲写真 小泉純一郎元首相(2001年4月26日)出典:首相官邸ホームページ
小泉元首相の場合は、しがらみがなかった分、「私が自民党をぶっ壊します!」と宣言して総裁選に出馬し、持論であった郵政民営化については
「殺されてもやる」と言い切って、2005年の世に言う郵政選挙で勝利を博することができた。
これに対してメイ首相の場合は、もともと消極的ながらEU残留を支持する立場であり、国民投票の結果を尊重するという大義名分だけで、なんとか落としどころを探ることしかできなかった。なおかつ、盟友も腹心も後ろ盾も無い身だったのである。
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