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メイ首相辞任後の英国の運命(上)

Japan In-depth / 2019年6月10日 21時32分

ともあれ彼女の辞意を受けて、英国民の関心はもっぱら後任の保守党党首=次期首相に集中しているが、その人物も彼女と同じジレンマに直面することを、どこまで真剣に考えているだろうか。


たとえば、6月初旬の段階で最有力候補とされているのは、強硬離脱派のジョンソン氏(元外相)だが、英国経済に大混乱をもたらすであろう「合意なき離脱」など、本当に強行できるのか。



▲写真 後継の首相有力候補のボリス・ジョンソン元外相 出典:Boris Johnson-opening bell at NASDAQ-14Sept2009-3c.jpg


キャメロン前首相辞任後の党首選で、早々と「離脱」してしまったことや、「毎週3億5000万ポンド(約56億円)の分担金が要らなくなる」という離脱キャンペーンが、とんでもない大嘘だったとして訴訟まで起こされていることなどを考えると、どうも英国政界の「言うだけ番長」で終わりそうな予感がする。


もともと、どうして彼の名が後継者に取りざたされたのかと言えば、


「雇用を守るため、関税同盟からの脱退だけは避けねばならない」とする労働党と、政策面での差別化を図りたいから、というだけの理由であると、英国のジャーナリストたちは冷めた目で見ている。


そもそも、今後のスケジュールはと言えば、7月に保守党党首選を行い、後任=次期首相を選ぶことになっているが、その後すぐ夏休みだ。私が、メイ首相の辞意発表を聞いて「思ったより早かった」と感じたというのは、話がここにつながってくる。


これもすでにご案内のことだが、数次にわたる交渉の結果、離脱の期限は今年3月末から10月末まで延長された。とは言え、夏休みを挟んで、この期限までに議会の同意と世論の支持を両方取りつけるというのはできない相談ではないだろうか。メイ首相が、二階に上げてはしごを外すような真似をした政治家たちへの腹いせに「夏休みの宿題」を押しつけた……とまでは思いたくないが。ここで見ておかなくてはならないのは、どうしてEUの側がここまで忍耐強く、離脱期限の引き延ばしに応じてきたのか、ということだ。実は「合意なき離脱」は、EUにとっても大きなリスクをともなう決定となるのである。


英国がEU側と、なにひとつ条件面での取り決めを交わさずに離脱を強行した場合、自動的に単一市場から排除されることになる。当然ながら、これは英国経済に大いなる混乱をもたらすが、しかし一方では、英国はもともと共通通貨ユーロに加盟していないし、たとえEUとの貿易額が激減したとしても、英連邦もあれば、米国のトランプ政権が強行離脱派に肩入れしているという事情もある。中国にすり寄る選択肢もある。


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