米とイランの危険な駆け引き
Japan In-depth / 2019年6月13日 11時0分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2019 #24」
2019年6月10-16日
【まとめ】
・イラン、米国にロケット装置を積んだイラン商船で「ちょっかい」。
・賢いイランは米の挑発には乗らない。
・中東地域のイランの悪行は注視すべきである。
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今週のハイライトは何と言っても安倍総理のイラン訪問だろう。タイミング的には筆者のワシントン出張と重なる。日本の総理としては41年ぶりとなるこの歴史的イラン訪問が米国からどう見えるか、ちょっと楽しみではある。しかし、総理が何故今イランに行くのかと聞かれれば、正直なところ、筆者も本当のところは分からない。
筆者には報道ベース以上の情報はない。そもそも内情を知っていれば、ここでは書けないし、書かないのがこの業界のルールだ。それはともかく、もし報道された通り、米国大統領が日本の首相に「仲介を依頼した」のが事実とすれば、日本外交も随分レベルが上がったものだと思う。一昔前なら、こんなこと起こり得なかっただろう。
この関連で6月7日付Wall Street Journalの興味深い記事をご紹介したい。「米・イラン『緊迫の2週間』、急変の背後に何が?」なる煽情的な題ではあるが、中身は意外に真面目だ。話は、米軍が5月に2週間、イラン軍が甲板上でロケット発射装置にミサイルを装填しようとしたとされるイラン商船2隻を尾行したことから始まる。
簡単に言えば、5月からイランが再び米国をテストしようと試みたが、米側が予想以上に強く反応したので、テヘランは今回出した「ちょっかい」を「止め」にした。筆者にはそうとしか思えない。こうしたテストはイランの常套手段だからである。そう考えれば、米国とイランの間で大規模な戦闘は起きないはずだ。
▲写真 イラン海軍 出典:Wikimedia Commons; Mohammad Sadegh Heydari
同記事によれば、米当局者が「イランは米政権の強硬姿勢を受けて対米戦略を変更」し、「自らの影響力が及ぶ中東地域の代理勢力に対し米国に一段と敵対的なアプローチで臨むよう指示した」と判断したのは4月下旬だという。米軍が冒頭のロケット発射装置を積んだイラン商船2隻に注目し始めたのはその直後なのだ。
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