演出された「米朝首脳会談」
Japan In-depth / 2019年7月2日 11時37分
朴斗鎮(コリア国際研究所所長)
【まとめ】
・ツイッター発の首脳会談は相互利害から演出されていた可能性。
・崔善姫第1外務次官とビーガン北朝鮮特別代表の周到な準備。
・米メディア、板門店サプライズは「トランプの選挙用ショー」。
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ドナルド・トランプ米国大統領が歴史上初めて休戦ラインを越え北朝鮮側地域に足を踏み入れた。そして金正恩委員長と6月30日午後4時から4時53分まで板門店非武装地帯(DMZ)韓国側「自由の家」で首脳会談を行った。昨年のシンガポールでの会談と今年2月のベトナム・ハノイでの会談に次ぐもので、2-3週間内の実務会談スタートを合意しただけの「ミニ首脳会談」だった。
この「板門店米朝首脳会談」が、トランプ大統領のツイッターから始まったとして世界を驚かせたが、それはトランプの選挙対策と金正恩の権威回復というお互いの利害から、事前に準備して演出された会談である可能性が高い。
■ ツイッター打診だけで金正恩が動くことはない
この会談のいきさつは、6月28~29日の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に出席するために来日中、トランプ米大統領が29日朝ツイッター上で、30日にDMZ(休戦ライン)板門店JSA(共同警備区域)のオ・ウォレット警戒所を訪問する際、金正恩委員長と面会する用意があると呼び掛けたのを、金正恩委員長が応じて実現したことになっている。金正恩はツイッターを見て驚き準備に入り、一日で決定したとしながら「トランプ大統領と私の間の良好な関係がなかった場合、このような再会が一日で電撃的に行われてなかっただろう」とトランプの演出に歩調を合わせた。
だが取り換えがきくトランプ大統領はとは違い、取り換えが効かない金正恩委員長の場合警護の面だけを見ても「ツイッターを見て驚き準備に入った」などとの軽薄な行動は許されない。そのようなことが可能であれば文在寅大統領と約束したソウル訪問はすでに実現しているはずだ。そうした即興的行動で金正恩の権威に少しでも傷ついた時、北朝鮮体制にどのような影響をもたらすかは、ハノイ米朝首脳会談決裂後に北朝鮮内部が揺れ動いた過程を見れば明らかだ。ハノイ会談の後遺症を回復するのに金正恩政権が費やしたエネルギーには計り知れないものがある。
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