演出された「米朝首脳会談」
Japan In-depth / 2019年7月2日 11時37分
金正恩の権威が高まり、それなりの「手土産」がない限り動かないのが北朝鮮の首領独裁体制だ。呼びかけられたからと言って、何の見返りもなく、友達に会うような気分で気楽に出てこられる金正恩ではない。
▲写真 トランプ大統領と文大統領の共同記者会見 出典:Flickr; The White House
■ 米朝の親書交換で「枠組み」固まる
このサプライズショーは、トランプ大統領が、シンガポール米朝会談1周年を前にして、金正恩委員長から「素晴らしい手紙をもらった。非常に前向きなことが起きるだろう」と明らかにした(6月11日)ところから始まったと見られる。文在寅大統領は、この親書の中身を見ていたのか、ノルウェーを国賓訪問中の13日(現地時間)、「(金正恩)親書の内容にはトランプ大統領が発表しなかった非常に興味深い部分もあるが、トランプ大統領が発表した内容以上のことを先に申し上げることはできない」と意味深長な発言をしていた。
そして10日ほどの後、今度はトランプ大統領が金委員長に「親書」を送ったが、この親書に対して金正恩は「立派な内容が含まれている。トランプ大統領の政治的判断力と格別な勇気に謝意を表する。興味深い内容を慎重に考えてみる」(6月23日、朝鮮中央通信報道)と反応した。今回の板門店イベントの具体的枠組みはこの時にほぼ固まったと推測される。
このトランプ大統領の親書については、ポンペオ米国務長官が6月23日、北朝鮮の非核化に向けた協議再開に道を開くものとの期待を示していた(ロイター6月24日)。
■ ビーガン・崔善姫で最終調整?
板門店会談のイベントが行われる前日の29日、北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)第1外務次官が「トランプのツイッター」に対して「興味深い提案だ」との談話を素早く発表した。「ツイッター」を受けただけで、その内容も確かめずに、北朝鮮の第1外務次官が即刻前向き談話を発表した事例はこれまでにはない。
韓国からの情報によると、韓米首脳会談準備のために訪韓中のスティーブン・ビーガン北朝鮮特別代表が29日の「トランプ歓迎晩さん会」にも参加せず、午後3時半から10時までどこかに姿を消していたという。国連軍司令部のホットラインを利用して北朝鮮側と綿密に打ち合わせを行ったか、もしくは秘密裏に崔善姫?と会い、水面下で具体的手順の調整を行ったのではないかと見られている。その時に米国側の何らかの譲歩、たとえば段階的同時並行的交渉方式を米国側が受け入れるといった譲歩が行われた可能性もある。
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