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パフォーマンス理論 その9 ピンチの時

Japan In-depth / 2019年7月4日 7時0分

パフォーマンス理論 その9 ピンチの時


 


為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)


【まとめ】


・コントロールできるものとそうでないものを分類できないと、自信喪失につながる。


・貴重な時間は、自分ができることに集中し、それを淡々とやりとげることに使う。


・人生は今にあり過去にも未来にもない。


【注:この記事にはリンクが含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depth https://japan-indepth.jp/?p=46580 のサイトでお読みください。】


 


長く競技をやっていれば必ずピンチの瞬間がやってくる。ピンチの時にどう振る舞うかが競技人生の成功に大きく影響する。興味深いのはこのピンチの瞬間にこれまでの競技人生をどう生きてきたかが端的に現れたり、また競技人生での1番の成長が訪れたりすることだ。


私の競技人生で一番ピンチだったのは、2008年の6月の日本選手権の時だった。この日本選手権で1位か2位になれなければ、五輪は絶望的となる状況で、その年のシーズン最初から私は下腿部の肉離れで試合に出れない状態が続いていた。そしてようやく治ってきてなんとか本番に間に合わせようという矢先に、反対側の下腿部を肉離れした。もう試合は1ヶ月前に迫っていた。陸上競技で1ヶ月前まで試合で練習できないというのは結構厳しい状況で、私自身も2度目に怪我をした瞬間はもうだめかもしれないと思った。


あの時の感情を羅列してみると以下のようなものだったと思う。最後の五輪だと決めていたのに、どうしてこの瞬間にこんなことが起こるのか。なんで怪我をしたのは自分で、他の人ではないんだ。あれだけ気をつけて繊細にトレーニングを積んできたのに。これで結局本番走れなかったらどうなるんだろう。その後の人生はずっと後悔するんだろうか。応援してくれている人もがっかりするだろう。ライバルたちは今どうしているのだろう。快調に練習できてるんだろうか。できればみんな怪我をしてくれないか。自分は名前もあるし世論に訴えかけて、選考会をずらしてもらうということができたりしないか。またはものすごく低調なレースになってなんとかなるということはないか。もし負けるとしたらみんななんて思うんだろう。なんだあいつは結局最後は敗者だったなと言われるのだろうか。自分のメンツが保たれるいい負け方はないか。同情を買うような負け方をすればまだ社会の見方は和らぐのではないか。頭の中でずっとこのようなことが回っていた。


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